◎仕事の癒やし!
我が主がつくった国シンドリアは活気あふれる賑やかな国だと思う。国民もそうだけれど、それだけではない。
王宮内でもヤムライハとシャルルカンが喧嘩をしていたりだとか、シンがこっそり仕事をさぼっていたりだとかけっしていいものばかりではないけれど、話のネタはつきないほどにまで積もっている。
そんなシンドリアに新たに3人の食客が招かれた。
少し前にバルバットで起こった事件に私も関与していたので知らない仲ではない。あの事件では私も考えさせられ、学んだことも多々ある。
それはさておき、招かれた食客というのは言わずもがな元バルバット王国の第三皇子アリババ・サルージャと4人目のマギであるアラジンとファナリスのモルジアナだ。
彼らには私が個人的に、しかも勝手にお世話になっている節がある。
何を隠そう、どっかのバカのせいで仕事が山積みになり疲れ果てた私を癒してくれるのはこの3人なのだ。
例えば、昨日。
書物庫にある書類を取りに行こうと宮中を歩いていると、3人が庭で花の冠を作りながら話をしているのが目に入った。
手先が器用なアリババがアラジンとモルジアナに作り方を教えているのだろう光景は見ているだけで癒される。
出来上がった冠を2人にかけてあげているあたり、アリババは2人の兄のようだ。アラジンとモルジアナも花がほころぶように笑って、こちらも自然と頬が緩んでくる。
しかも、アリババは本当に手先が器用で真っ白な小花をベースに色とりどりの花を散らした冠はちょっとした芸術品だった。
子供たちに癒され、花に感動させられ、幸せ気分で近付いて声をかけると元気な声で返してくれる。もう、本当に可愛くて仕方ない。
「器用なものですね。とても綺麗です。」
「でしょ!アリババくんとっても器用なんだよ!」
「いやぁモルジアナが綺麗だから似合うんだよな!」
「ううぅ…それを言うならお二人もでしょう!」
ああ本っ当に、君たち全員可愛いんだからっ!!!!!
さすがに口にしたら私のイメージが崩れおちるので言わなかったが、1人だったら確実に変な声がでてるだろう。
ここは楽園ですかっ!!
あと誤解がないように言っておくと、私はショタコンではない。
もし、そう尋ねられたらきっぱりと宣言する自信がある。
「私は子供が好きなだけです!」
と。ちなみにジャーファルの子供好きに関してはシンドバッドがツッコミを放棄するレベルだ…。
“こんど服でも買ってあげましょうか…‥。”
午後になっても(というか四六時中)相も変わらずそんなことを考え仕事部屋にこもっていると、部屋にノックの音が響いた。
「…はい、どうぞ」
そう言った後ゆっくり開いたドアから顔をのぞかせたのはモルジアナとアラジンとアリババだった。
何かあったのだろうか?
そんな不安を抱きながら、子供たちに詳細を尋ねる。
「…どうかしましたか?」
「あの……」
「これをジャーファルさんに渡しに来たんだよ!」
アラジンの言葉に考える間もなく、目の前にあるものが広げられた。
「これは……」
色とりどりの花が視界いっぱいに広がる。先程の花で作られた花束だった。
しかもただの花束ではなくところどころにアレンジが加えられたものである。
「いいんですか?こんな立派なもの貰ってしまって?」
「ジャーファルさんにはいつもお世話になっているのに私たちにできることはこのくらいしかありませんから。」
「そうだよ!ジャーファルお兄さん!」
「いつも切り詰めて働いてるの見てるんですから…。」
「…………」
「ジャーファルさん?」
いきなり黙ったジャーファルを3人が心配そうに見上げてくる。
“くそっ、なんでこんなに可愛いんだ?詐欺か!?詐欺可愛いっ!誘拐したい…‥。”
このときのジャーファルの思考はなかなか危ないものだったのはここだけの話だ。
それら全てを隠して言い切るジャーファルはさすがこの国の政務官というか…‥。
「本当にもうっ……、大好きです!!」
…‥後に、間違いなくジャーファルの心からの叫びだったと、修行の誘いに近くまで来ていたシャルルカンは語る。
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