七月も終わりに差し掛かり暑い日が続く。学校も夏休みに入り、今日は部活も珍しく休みだ。
折角の休みを満喫しようと、千歳の部屋へ泊まりに来たところまではよかったが、千歳の部屋にはエアコンは勿論のこと扇風機すら無い。この暑い中、窓を開けるだけで生活しているらしい。健康にうるさい俺には理解できない行動だ。

そんな千歳の部屋で内輪を扇ぎながら寛ぐ努力をしようとするのだが、如何せん暑すぎる。

「千歳、あっついわ…!」
「そうやねぇ。あ、白石妹おるけんね?」

今まで俺をほっぽって雑誌を読んでいた千歳が、ふと何か思い出したのか顔を上げる。

「?妹なら居るで」


投げ掛けられた疑問に答えると、雑誌を置いて千歳が立ち上がり部屋の隅に置いてある引き出しからごそごそと何かを取り出して戻ってくる。

何かを握った手を差し出され、訳がわからず千歳を見上げていれば、ん、と言われた。このやりとりは千歳が好きな映画みたいだ。
恐る恐る手を出し、受けとればそこには何の変哲もない黒いヘアゴムが置いてあった。

「首があっついけん、白石妹おるなら結ぶの上手かろ?結んで?」

俺の前へ座り楽しそうに言ってくる千歳。櫛もなしにこのくるくるした髪をどうしろと謂うのか。

しょうがなく持ってきたバックを漁りコームを探す。千歳の髪には向いてないが無いよりかはマシだろう。
座っていても高いところにある千歳の頭へ膝たちになりながらゆっくり梳かしていく。ふわふわとした柔らかい髪は案外コームを通し、時々絡まっているところをコームの後ろを使い直していく。

結んでほしいと言った張本人はのんびりと読み掛けの雑誌の続きを読んでいる。いい度胸だ。

大体整え終わったところで髪を結ぶ。どんな髪型にしてやろうか悪戯心が浮かんだが、ここで悪戯したら今日一日無視されることになるだろうと安易に予想出来たので諦めて高めのポニーテールにする。毛先の内側が汗で湿っていてしっとりとしている。
千歳の髪を結び終え、汗の匂いとともにふわりと香るシャンプーの匂いと、結んだことで綺麗に見えるうなじに思わずくらくらする。耐えきれず後ろから首筋に顔を埋めれば、「あつか!」と言われて頭を叩かれた。

「千歳ー、仕事したんやしいい加減構えや」

離さないとばかりに強く抱き締めれば、ハァとため息が聞こえ雑誌を閉じる音がした。

「今日の白石は甘えたさんやねぇ」
「千歳がかわええのがいけないんやで」

お互いを見ることなく話し合う。
ちゅっと首筋に唇を当てればくすくすと笑われた。

「…何が面白いねん」
「んー?白石むぞらしかねーって」
「やから、かわええのはお前やって」

そんなやり取りを繰り返しているとくるりと千歳が振り向いて、額にキスされた。
きょとんとしていると、可愛らしく笑われ、「やっぱりむぞらしか」と言われて次は唇にキスされた。
正面から見るポニーテールの千歳は新鮮で、そこがまた可愛くて今度は俺から千歳の唇にキスをした。


( 暑くて、熱い )



唐突にくらちとが書きたくなって勢いでやった。後悔はしてる。白石は櫛じゃなくてコーム使ってそう。千歳は櫛かな。夏って本題から外れまくった。
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