※最カノパロっぽいもの。



千歳が右目の手術に海外に行って一年が経過した。何度か手紙や電話をしたが一度も繋がる事はなかった。

『行ってきます』

千歳が振り替えって最後に言ってくれた言葉だ。必ず帰ってくると言っていたのに今や音沙汰無い。手術は成功した?失敗した?元気?…まだ俺のこと好き?聞きたいことは山ほどあるのに千歳がいない。

白石やユウジにはもう忘れろと言われたが、忘れられる訳がない。こんなにもまだ千歳のことを想っているのだから。
そんなときだった。
千歳が帰ってきたのは。

『駅前に千歳がおる!』

ユウジから電話をもらって駅前まで走った。走っている間に嘘じゃないか、会ったら何を伝えよう、今まで何故連絡をくれなかったんだ。言いたいことと聞きたいことがごちゃ混ぜになりながら走った。
駅前に到着してユウジと合流する。ユウジに連れて行ってもらい、少し離れたところでも千歳を見つけられた。
少し伸びた髪に相変わらずの長身。右目には眼帯をしていた。
キョロキョロと誰かを探しているように辺りを見回して、…目があった。

俺の存在に気付いた千歳は少し驚いた後にこっと笑って俺の方へ歩いて来る。その様子に気付いたのか、ユウジが背中を押して行ってこい!と笑顔で言ってくれた。

人混みをかき分け恐る恐る千歳に近付く。

「…ただいま、謙也」
「…おかえり…」

あんなにも何を言ってやろうか考えて居たのに、千歳の声を聞いたら全て飛んでいってしまった。変わらず耳に馴染む綺麗な声。

「…何で連絡のひとつくれなかったんや…」
「うん、ごめんね」

かろうじて連絡の事を伝えれば謝罪だけで終わらされた。理由すら教えてくれない。そのままお互い無言で見つめあう。端から見れば可笑しな光景だろう。

「…公園いかん?」

ぐるぐると頭の中で次の言葉を考えていると、千歳から移動の案が出た。確かに此処は駅前で人通りが多くゆっくりと話せる場所ではない。一度頷いて二人でゆっくり歩き出した。

特に何を話すでもなく無言で歩く。
五分ほど歩くと小さな公園へとたどり着いた。
平日の夕方だからか、それとも住宅街から少し離れているかわからないが、ひっそりと存在している公園に人影は無かった。公園に足を踏み入れて一つしかないベンチに二人で座る。
何から話そうか考えていると、今まで無言だった千歳が穏やか話し出した。


「…連絡出来んくてすまんね」
「…別にもうええわ。それより右目はどうなったん?」
「手術は成功したけん、きちんと見えるようになっとうよ」
「ほんまか!」
「…だけん、俺ん右目は可笑しいたい」

するりと千歳が眼帯を外す。外した右目は左目と同じではなく、瞳の色が赤く染まっていた。予想外の出来事が起きて息を呑む。
そんな俺の反応を気にすることなく千歳はベンチを立ち上がり二、三歩前に歩き出しくるっと振り返り優しく微笑んでくれる。


「あんね謙也くん。俺はもう"俺"じゃなかと」


どういう意味か問おうと口を開こうとすれば、ザクッと嫌な音がして後ろから小さな悲鳴と共に勢いよく何かが倒れる音がする。
音のした方を向いてみればそこには首にナイフが刺さった見知らぬ人が倒れていた。驚きで身体が動かず声も出せない。これは質の悪い冗談なのか。
数秒間ピクピクと痙攣していた身体はついに動かなくなった。


「…奇襲されそうになったけん、1人倒しました。目標までの位置ば教えてくれたら今から向かいます」


何が起こっているのか訳がわからず、千歳の冷静な声で飛びかけていた意識が戻る。勢いよく振り返れば、死体など興味無さげに誰かに電話を掛けている千歳がいた。


「…了解したばい。ターゲットを確認し次第殺します」

話終えたのか、携帯をしまい改めてこちらに向き直る。

「…ち、とせ…?」

ようやく出せた声は掠れて聞き取りにくいものになってしまった。
それでも千歳の耳にはしっかりと届いたのか先程と同じ微笑みをくれる。

「なんね?」
「この人…」
「俺がやったばい」
「っ、なんでや…!」
「…うん、ごめんね」
「ごめん、やなくて理由言えや…!」
「…ごめんね、俺もう行かなきゃいけんばい」

そのまま千歳は俺に、背を向けてまた一歩前に出る。
追い掛けようと立ち上がった瞬間、強い風が起きて思わず目を瞑った。
風が収まり目を開けるとそこには、電子回路やコードがむき出しの機械の羽根が千歳の背中に生えていた。
そして、左腕は身体の半分程の大きさの銃に変形していた。
続けて起こった常識では考えられない事に頭がついていかない。
目の前のものが信じられず、立ち上がった姿勢で硬直していると離れた場所にいた千歳が此方へ近づいてくる。
思わず後退ってしまい、その様子を見て千歳の動きが止まり苦笑された。

「ビックリさせたと?俺ね、兵器になったんよ」

くすくすと無垢な笑顔を浮かべながら笑う千歳に戸惑う。どうしたらいい?何を言えばいい?…何も浮かんでこなかった。
情報として目から入ってくる物を脳が受け付けてくれず何も考えられない。
そんな俺の姿に満足したのか、前へ向き直って飛び立って行く千歳。飛び立つ音に掻き消されそうだったが確かに聞こえた。

(ごめんね、謙也。…今でも好いとうよ)

(その答えを誰に返せばいいの?)

( 現実
)



最カノ好きですが脱線しまくりました。本編好きな人ごめんなさい相変わらずよくわかんないです。
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