DEATH MATCH部屋

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 コスモス陣営に戻る頃には既に日が傾いており、空はオレンジに染まっていた。出たときは朝方で太陽の明かりさえなかったというのに。スコールは大量に抱えた素材を持ち帰路についていた。
 コロシアムに篭っているとつい時間を忘れてしまう。スコールらしくもなく。けれど、あの光の戦士ですら同じ状況になるというのだからコロシアムの魔力はすさまじい。特別戦闘狂ではない、とスコールは思う。あくまで自己判断ではあるが。
 毎回想像よりも多くの荷物を抱えてしまう羽目になるのもいつものことだ。先ほどセシルも見かけたが、もうしばらく居るのだろう。帰りの荷物のことは考えないようにしているよ、とさわやかに言われてしまった。検討を祈る。

 しばらく歩くと、陣営である秩序の聖域が近づく。ここは何もなく、見晴らしも良いせいで隠れるものすらないが当主コスモスがいるだけあって滅多に攻め込まれない。所謂本陣なのだからそう簡単に敵に踏み込ませるわけにもいかないので、誰かが必ず護衛をしている。だからこうして安心してスコールたちは遠出が可能になる。

 そんな何もない場所で、見覚えのある目立つ金髪が見えた。重力を無視したようなその髪型の持ち主は、何をするでもなくただ立っていた。強いて言うならば視線が上に向いていて空でも眺めているように見える。

「……クラウド?」

 距離があるのだから言葉が届いたわけでもないだろう。しかしクラウドはスコールが名前を呼んだ瞬間、タイミングよく振り返ってスコールを見た。クラウドに口が「スコール」と動く。声はやはり聞こえない。
 よほど機嫌がいいらしい。珍しく口元に柔らかい笑みを湛えてスコールを手招きした。その様子に面食らったわけでもないが、素直に従う。お互い無口な性質で、仲が悪いわけでは全くない(もしろ気は合うほうだ)が、こうして親しげに呼ばれるのもなんだかこそばゆい。お互い無口で、そしてたぶんクールで通っているから。

 従うまま、クラウドの隣に立つ。本当に珍しい。鼻歌でも歌うんじゃないか、とでも思うくらいには空気が柔らかい。スコールほどじゃないが、クラウドも強さ故の棘がある。今はそれが全くない。もしかしたら、こんな姿は初めて目にするかもしれない。
 夕焼けに照らされ元々実年齢より幼く見える顔は、さらにそう見えた。

(一体何がそんなに楽しいんだ)

 スコールの心の声が聞こえたのかはさだかではないが不思議そうにしている視線に気が付いたのだろう。クラウドは空を指差した。

「スコール。あれ」

 先の視線をたどる。クラウドの機嫌が良い理由がわかった。
 長い金色の睫毛を震わせながら、一点にそれを見つめている。

「……雨は、降っていないはずだが」
「この世界の秩序はわからない。でも俺は、見れて嬉しい」

 クラウドの指の先には、七色の橋がきれいなアーチになって空で輝いていた。

「虹で喜ぶなんて、あんたも案外子供だな」
「ふ、そうかもな。…頬が緩んでるぞ、スコール」

 珍しいものが見れたと笑うクラウドにこそ同じ言葉を返すべきだ。けれど、楽しそうなクラウドに水を差すことは出来ず、スコールはいつものように心の中に収める。

(あんたがそんな風に笑うところ、はじめてみた)
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