純粋な恋心はいつしか狂気に



昔から隣で優しく笑うお前を
閉じ込めてしまいたい

そう、
俺が初めて思ったのはいつだろう


昔から錫也は皆のオカンだった。
皆の世話を焼いて、喜んでくれる顔が見られれば、俺はそれで満足なんだよっていつも笑って言ってた。

でも
俺は皆の世話を焼くお前が
大嫌いだった。


俺だけの世話を、
俺だけの為に焼いて欲しい。

他のものなんて見なくていい。
他の奴なんてほったらかしでいい。


ただ、俺だけを
純粋で可笑しいと笑われるまでに愛して欲しかった。


そしてあいつがそうなる為には
何が必要か、考えた。

結論は、その為には、ちゃんと
あいつが俺しか見えないようにすればいいんだ。とたどり着いた。

理科の実験。
錫也の班の試験管に、混ぜると爆発する薬品を入れておいた。

錫也の班は、全てを優しく懇切丁寧に教えるあいつに全て頼りきり。
だから、あいつが試験管を覗くのは、分かり切ったことだった。


後は、錫也の目に薬品か硝子の欠片が入るか否かだ。

それが成功すれば優しい優しい錫也の瞳は潰れ、何も映さなくなる。


しかし錫也の最後に見るものが、試験管というと、なんか試験管にも嫉妬しそうだったから俺は錫也の目が、光を移さなくなる前に彼の名を呼ぶことを決めた。


そうすれば、失明直前の彼の視線は俺に釘付け。



俺の最後にみたものは、
哉太、お前だったんだ

あぁ、
なんて甘美な響き。


その言葉はしっかりと聞きたいな。
その時に雑音を立てる屑がいるようなら俺は容赦しない。

アンモニアで喉を潰し、俺の至福の時を邪魔したその愚か者に罰を下すのみだ。




「錫也!」



上手く行きすぎて自分が怖い。
今まで苦労してきた分、神様がきっと俺に味方してるんだろう。

錫也の瞳はあっけなく潰れた。

最後に俺を映して。


「哉太…ごめんな、俺が歩いたりするのが遅いばっかりに…」

俺と錫也は授業に遅刻した。
原因は、錫也が階段をなかなか降りれなかったことだった。


まだ目が見えなくなって二日。
そんなの怖いに決まってる。俺はそう言って、錫也をおぶって階段を降りてやったのだった。
そして授業に遅れてしまった罪の意識と俺までもを遅れさせてしまったという罪悪感。そして申し訳ないという気持ち。


そんなのを気にしてるところが可愛いんだよなぁ、錫也は。

俺がそんな事気にしてるはずないのに


むしろ
俺はもっともっと遅れたい。
お前と二人きりの時間を過ごして、お前は俺が居ないと生きられないんだって、自分と錫也に言い聞かせたい。

そして
多分、その時の世界一美しい錫也の泣き顔が見られるだろう。


あぁ、なんて歪んだ僕の想い







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