ぼくらはひとりじゃ生きていけない。だからこの手は離しちゃいけないんだよ。最初にそう言ったのはきみだったのかぼくだったのか。『ヒトハサミシイイキモノ』そんな言葉は、ぼくらをただしあわせにした。 どうして雪が降るのか知らない。どうして冬が寒いのか知らない。ぼくらにとって、冬は命をうばってゆく審判の季節だ。この冬友だちがもう5人死んだ。 汚れた街の片隅で生きるぼくらを、大人は見て見ぬふり。凍った死体になった朝、初めて子どもに気づいたように警察が来る。 ぼくとフランの息は、雪に負けないくらい白かった。一枚の毛布にくるまっているけど、濡れた毛布じゃ温度を分かち合うことはできない。フランはさっきから眠そうに目をこすっていて、もうそろそろぼくらの番だと知る。凍えるにはいい夜だ。あとからあとから降ってくる雪に、きっと天使も隠れてる。朝になればぼくらは白くうつくしいひとつの塊になれる。 怖くない。手をとりあってからずっと、ぼくとフランは一緒だった。いつだってフランに触れていた。それだけは永遠みたいに、きっと変わらない。 「ねえ、まだそばにいる?」 「いるよ、ずっと。だからもう、眠ってもいいよ」 小指を絡めて。 約束しよう。 いつかまた、きっと会える。 だから今は、おやすみなさい。 ← |