Happy Days

今日は引っ越してから久しぶりに2人の休みが重なったので、生活に必要なものを買い出しに行くことになっていた。
あの日、神羅ビルから無我夢中で逃げ延びたときはこんな風になるなんて思ってもみなかったっけ。

逃げ延びた先は七番街スラムで、右も左もわからなかったあたしは、とりあえず現在地だけでも把握しようと着いた先が駅前だった。
誰かに聞こうとした所でクラウドと再会した。
ぐったりと倒れた状態でいたクラウドは、駅員さんに最初酔っ払いかと思われていて、慌てて駆け寄ったあたしが知り合いだと安心して仕事に戻っていく。
最初、少し記憶の混濁が見えて様子がおかしかったけど、あたしの顔を見て安心したように抱き締める。

無事で良かったーーーそう言ったクラウドだったけど、それはあたしのセリフなんだよ。
一緒に旅した時間は短くても、ずっとずっとクラウドが"帰ってくる"のを待ってた。
信じてはいたけど、実際に元気な姿を確認するまでは不安で、だからこそ、こうしていてくれることが嬉しくてたまらない。
そんなことを、あたしが思っていることをクラウドは知らない。

ひとまず、ここにいるワケにもいかないあたし達は情報収集も兼ねて近くにある七番街スラムに足を踏み入れた。
そこでもう1人の幼馴染であるティファと再会し、ティファには"恋人同士"だと勘違いされ、天望荘の一室を使うように言われた。
否定する間も無く半ば強引に放り込まれたあたし達だったけど、夜も遅かった関係で今日はこのままでいるしかなかった。
ティファに誤解されて申し訳ない気持ちでいっぱいだったあたしに、クラウドは少し不機嫌で。

「俺はティファに勘違いされたままでも構わない」
「でも… 」
「俺はなまえが好きだ。なまえが同じ気持ちじゃないなら、この部屋は使ってくれ。俺は出ていくし、今言ったことは忘れてくれ」

そう言って出ていこうとするクラウドの腕を慌てて掴むと、一瞬だけ驚いた顔をした後でぐっと堪えるように噛み締める。
勘違いするぞーーーそう言ったクラウドにあたしは頷くと、奪うように唇を塞がれた。



ーーーーーーーーーー



何回かに分けた買い物を済ませたあたし達は、やっと家に帰ることが出来た。
さすがに疲れてしまい、ソファーに腰掛け一息つく。
今日買った物はあちこちに置いてあり、さすがに片付けなくてはならないけど、今はやる気にならなかった。

あの日から本当に恋人同士になったあたし達は、七番街でなんでも屋の仕事を続けてお金を貯めて天望荘から引越した。
大家さんであるマーレさんはよくしてくれたけど、さすがに2人で暮らすには手狭だったので別の場所を紹介して貰い、やっと買い物に出たのだ。
引越してから休みが重なるまでは必要最低限の買い物しか出来なかったけど、やっとお互いの休みが重なり買い出しが出来た。
デートだねって言ったら、クラウドが少し照れ臭そうにしていて、あたしはそれも含めて嬉しかった。

「よし、休憩終了っと。ひとまず、今日はここまでにして、追加で必要なものはまた今度買いに行こっか」
「そうだな。リスト化してくれたら、俺がついでに買ってくるよ」
「ううん、一緒に買いに行きたいな。クラウドと一緒に使うものだもん。一緒に選びたいな」
「…そうだな」

クラウドの笑顔が嬉しくて幸せな気持ちが溢れて止まらない。
最後に買った食材をしまいながら、今日の夕食の献立を考える。
さすがに疲れている手前簡単なものしか作れそうにないけど、今日だけは許して欲しい。
そこまで考えて思い返すけど、クラウドはあたしのご飯を美味しいと食べてくれるし、文句を言われたこともなかったなって。

「なまえ」
「わっ、クラウド!包丁持ってるのに危ないでしょ?」
「そうだな」
「もう、本当にわかってる?」
「あぁ」
「全然わかってないじゃん。夕飯作れないよ?」
「…かもな」

後ろから抱き締めたクラウドは、嬉しそうに甘えたように首筋にすり寄ってくる。
普段の彼からは想像できないこの姿は、あたしだけの特権みたいで嬉しい。
今日はもう夕飯は作れそうにないなぁと包丁を置いて振り返ると、至近距離で笑うクラウドの顔が幸せそうでーーーあぁ、怖いくらい幸せだなぁって思う。
そっとクラウドの頬にキスをすると、少し驚いた顔をしながらも嬉しそうにしてくれる。

「夕飯よりも先になまえが欲しい」
「っ、じゃあ…お風呂のが先かな…?」
「なまえ、顔真っ赤だ」
「誰のせいだと…!」

思わず下を向いたあたしの顔を両手で包んで持ち上げて、視線を合わせてくる。
いつからこんなにあざとくなったの?
本当に翻弄されっぱなしなのが悔しいくらいだけど、それと同時に幸せでたまらない。

クラウドに手を引かれながら、バスルームに向かう途中でソファーの上に置かれた荷物が目に入る。
きっと片付けは明日になるだろうし、作ろうとした夕飯は明日の昼ご飯になりそうだなとーーーそう、ぼんやりと思う。

この後、そんななまえの予感は的中することとなる。



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