それはまるで。

「クラウド!俺、今日すっげー可愛い女の子に会っちゃったんだよなぁ。一目惚れっつーの?」
「それ、つい1週間前も同じこと言ってなかったか?」
「いや、今回はいつものとは違うんだよ!ビビビッって言うの?こう、サンダーで打たれたようなそんな感じでさぁ」

そう言って熱弁していた"誰か"を思い出す。
一目惚れなんて気持ち、俺にはわからない。
そもそも誰かを好きになるとか、そういう気持ちがイマイチ理解出来ないーーーそう言ったら、その"誰か"は「クラウドにはまだ早いか」と笑って、頭を撫で回される。
子供扱いされたみたいで腹が立って、俺はその"誰か"の腕を振り払った。

別にそういう気持ちを否定するつもりはないが、今はもっと強くなってソルジャーになりたいと、その思いが強かった。
そんな風に昔のことを思い出しながら、興味なさそうにしている俺に、その"誰か"は更に熱が入ると、その一目惚れした彼女のことを話し続ける。
一緒にいた別の誰かが「まぁた始まったよ。どうせ、またフラれるだからほっとこうぜ」と言って、言い合いをする2人を見ながら、俺はあの時なんて思ったんだろうーーーそう、記憶を辿るが思い出せなかった。

「紹介するね。こちらクラウド。私の幼馴染で元ソルジャー。次の作戦に参加して貰うの。で、こちらなまえ。今回の作戦は裏方だったから一緒には行かないんだけど、頼りになる私の先輩なの」
「なまえです、初めまして。普段は他の場所にいる仲間たちとのパイプ役だったり、交渉役だったり…勿論、作戦にも参加してるよ?今回は、あたしの代わりによろしくね」

ーーービビビってサンダーで打たれたようなそんな感じでさぁ。

そう言って笑ったなまえの顔を見て、あの時の言葉を思い出す。
自分には全く無縁だと思っていた"一目惚れ"という言葉が当て嵌まるかのように、なまえの笑顔を見た瞬間、サンダーを喰らったかのような衝撃だった。
固まる俺に、目の前のなまえは不思議そうに首を傾げて俺の手を握る。
そんななまえになんて答えたかわからないくらい、俺は動揺していた。



ーーーーーーーーーー



あれから、なまえとは少しぎこちない。
ぎこちないのは俺だけで、なまえは他の奴らと変わらず話しかけてくれる。
それが少し悔しいなんて思うくらいには、この気持ちを拗らせている自覚はあった。

なまえは普段ティファと一緒にセブンスヘブンで働きながら、アバランチの活動をしている。
ティファもなまえを頼りにしているらしく、セブンスヘブンの切り盛りだけではなく、アバランチの活動も絶対の信頼を置いていた。

「ねぇ、クラウド。ちょっといい?」

セブンスヘブンで昼食を口にしていた俺に、ティファはこっそり話しかけた。
こっそり話しかけなくても、相変わらず昼間から騒がしい店内だから聞こえることはないはずだが。
アバランチの作戦のことだろうかーーーそう思いながら頷くと、ティファは予想外の言葉を口にする。

「なまえのこと、好きなのはわかるけど…そんな態度じゃ誤解されるよ?」

そんなティファの言葉に飲んでいたお茶を吹きそうになる。
慌てる俺に、ティファはため息をつくと「隠してるつもりなの?」と呆れながら近くにあったペーパーをそっと置いてくれた。

「クラウドの態度じゃ、なまえ嫌われてるかもって思っちゃうよ?」
「俺は別に…そんなつもりは…」
「もー!セブンスヘブンに来るお客さんの大半がなまえ目当てなんだからね!クラウドがそんな 態度じゃ他の誰かに取られちゃっても知らないよ?」

うろたえる俺に、ティファはそう告げてなまえの方に視線を移す。
釣られて視線を動かせば、客と楽しそうに話しながら料理を提供したり、注文を受けたりしている忙しない姿が目に映った。

ここの客の男たちがなまえ目当てで来ていることぐらい、ティファに言われなくてもわかってはいた。
その笑顔が見たくて、声が聴きたくて来ているのは俺だって一緒だ。
それでも、どうなまえに話しかければいいのかわからないまま、他の誰かに取られるのは嫌だと思うぐらいの身勝手な気持ちは、どんどんと俺の中で育っていく。

「あ、クラウド。ご飯足りてる?男の人だし、クラウドはソルジャーだから、じゃんじゃん食べてね!」
「あぁ」

短く返事をした俺を見たティファは、なまえに見つからないように睨み付ける。
俺だってわかってる、とそう視線を送れば、また呆れたようにため息をついた。

「ねぇ、なまえ」
「ん?」
「クラウドがね、なまえに話があるんだって」
「そうなの?」

言葉にならない俺にティファはウインクをすると、カウンターを出ていく。
ティファの言葉に嬉しそうにしたなまえは、さっきまでティファがいた場所に立つから自然と距離が近くなる。

「話って何?もしかして、言い難かったり?」
「あ、いや…その…」
「んー…もしかして、恋の悩みとか?大丈夫、お姉さんに任せなさい!」

そう言って笑うなまえは自分がその対象であるなんてこと、微塵も思っていない態度だ。
あくまで仲間として、年上の姉のような気持ちでいるのかもしれない。
鈍感なところはあるだろうが、俺自身の身から出た錆ーーーそれはわかっていたが、それでも無性に腹が立ってくる。

「クラウド?」
「なまえ、明日の予定は?」
「んー…明日はティファからお休み貰ってるから1日ゆっくりしようかなぁって思ってたところ」
「そうか。じゃあ、明日なまえの時間を俺にくれないか?」
「もしかして、デートのお誘い?なーんちゃって…」
「あぁ。そのつもりだ」

俺の言葉に顔を真っ赤にしてうろたえるなまえは、さっきまでの"年上の余裕"なんてない初めて見る表情。
これで少しは自覚してくれただろうかーーーそんなことを思いながら返事を待つ俺に、なまえはうろたえながらも「あたしで良ければ」と口にする。

こうなってしまえば、もう前に進むだけだと腹を括る。
きっかけをくれたティファに感謝しつつ、明日以降どうやってなまえに想いを伝えるかと、そんなことを考え始めていた。



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