作品 | ナノ


16

お釣りを受けとり振り向くと、そこにサンジの姿はなかった。

ついさっきまで、人の買い物にあーだこーだと口出ししてたのに、なんてやつだ。腹もへったのに。とりあえず、サンジを探さなければ。
「ありがとう」
店のオヤジに礼を言っておれは通りへ出た。

昨日から上陸しているこの島は、小さいわりにとても賑わっていて、海賊のおれ達相手でも商売をしてくれる。
さっきの店のオヤジも「海軍も海賊も、客は客さ!ドンドン買ってけ兄ちゃん!」と危うくいらないものまで買わされそうになった。サンジがいてくれてよかった、今はいないけど。
でも、この町全体の明るく楽しい雰囲気は、居心地がよくておれは結構気に入っている。

通りには道を挟んで左右に食品や雑貨、服いろんな店が立ち並び、多くの人で賑わっている。さっき店に入った時よりもずっと通りは人が溢れていて、普段はすぐに目につく金髪もなかなか見つからない。てっきりどこかでメロリンしているものだと思ってたのに、考えが甘かったか…。

動かず待ってた方がいいか、それとも探しがてらブラブラするか…そんなことを考えていたら声をかけられた。

「おい、兄ちゃん買い物か!」

声の主は、立ち止まっていたおれを不思議に思った店のオヤジだった。
「すまねェ!ちょっと人を探してて!」
おれは慌てて買い物客ではないことを伝えると、店の奥からおかみさんらしき女性が出てきて、
「この時間は多いのよ!30分もすれば落ち着くから、それから探しな!」
「いつもこんななのか?」
「まぁね。急がないならうちで茶でも飲んできな兄ちゃん、海賊だろ?」
そう言っておかみさんが店の奥に姿を消し、オヤジに促されるままおれは店の前の丸椅子に腰を下ろした。
少ししてお茶持ってきたおかみさんが
「うちは乾物屋なの。この辺の海で捕れたもの使ってんのよ。」と言って店に並ぶ品々の紹介をしてくれ、この町の事も話してくれた。サンジが聞いたら喜びそうな料理の話もしてくれて、おれは話を聞きながら忘れないように、っとメモをとる。
おれも休憩代のお代になればと、おれ達の冒険の話をした。

おかみさんと話をしていると店にお客がやってきた。
「あれ?おかみさん若い男捕まえて何してんの」
常連のようなその男性はおれとおかみさんを交互に見て豪快に笑う。
「いいだろ〜。そこのよりよっぽどいいよ」
"そこの"とは店のオヤジのことだろう。言われた本人は聞いているのかいないのか、腕を組んで目をつぶっている。
「海賊でねこの人。通りは多いから休憩でかしてんの」
「ほほー海賊かい!どうだいこの町は」
常連の男性はおれの肩をバンバン叩き、これまた豪快笑う。
「おかみさんもオヤジさんもみんな親切だし、食いもんも美味い!いいなこの町!」
おれが素直にこの町の感想を伝えると、常連の男性は満面の笑顔で
「だろ!兄ちゃんわかってくれるかい!そうだ、観光ならこれやるよ!ここの特産なんだ」
常連の男性は持ってた紙袋をおれに差し出してきた。中には見たことない果物がゴロゴロと入っている。
「これ…」
「さっき買ったんだけど、兄ちゃんにやるよ!」
「いや!さすがにもらえねェから!」
「いんだ!気にすんな!兄ちゃん愛嬌あって気に入ったぜ!」
そう言ってまた、おれの肩をバンバン叩く。
「もらっときな。そうだ私もこれやるよ!」
今度はおかみさんが店の商品をおれに渡してきた。
「おしゃべり楽しかったからね!休憩代引いたってお釣りがでるよ」

気がつくと通りの人はすっかり落ち着いていた。








「おい。なんだそれは」

人が減った通りを歩いていたら、やっとサンジを見つけた。
正確にはサンジがおれを見つけただけど。
"それ"とはもちろん、おれの両手にある頂き物の数々。
結局あのあと常連の男性の知り合いが店に来たり、隣の店の人が現れたりでかなりの量をもらってしまっていた。

「なんか、もらっちまって」
「なんか、もらっちまう?んなことあるか!」
あるかと言われてもあったんだから仕方ない。というより、なんでサンジはこんなに不機嫌なんだ?

「てめェ…さてはまた…あっちこっちに愛嬌振りまいてきたな…」
サンジがおれの目の前まできて、じっとおれを見る。怖いんですがサンジくん…。思わず後ずさったおれの腕をサンジが掴んできた。

「どこのどいつに振りまいてきた!おれがもっぺん一緒に行って、頂き物の礼をいってやる!」
「はァ?え?何言ってんだ?」
「どこの男だ…連れてけ」


いや、だから!
一体なにに怒ってるんですかサンジくん!



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