高誕 | ナノ
「はぁ?行かないって、何言ってんの?」
屋上で寝っ転がったまま動こうとしない高杉のマウントポジションを取り、襟を掴んでグワングワン首を揺らす。それでも動じない彼に少しイラっとしたが、そんな事今日始まった話では無い。
「だから俺は行かねェ」
「ワガママ言わないで。今日は誰が主役だと思ってんの」
しかしいつもならしょうがないと諦めるが、今日はそういうわけにはいかない。何故なら、
「今日はアンタの誕生日だからってみんな今ファミレスで待ってくれてんの。だから早く行こうよ」
そう、今日は高杉の誕生日だからだ。
普段あまり教室に現れない高杉をどうにか馴染ませてあげようと思ったヅラの発案で、学校帰りに高杉の誕生日会を開く事になった。しかし当の本人は全く乗り気では無く、むしろ迷惑だと言い切るほど嫌がっている。
「俺は別に祝ってくれなんざ言った覚えねェ」
「そんな事言わないでさ、ね?」
私がこんなに頼んでるというのに彼はそっぽを向いたまま。前々から思ってたが、この人はとても頑固だ。
しかしこんな血の気が多そうに見える高杉の事をクラスメイトは不良だから授業をサボってると思っているけど、実際は人前に出るのが苦手なだけだとは誰も思わないであろう。数ヶ月前までの私もそうだった。
しかし以前高杉がどうしても教室に入らなくてはいけない事があり、ドアの前でソワソワしている彼を見て本当に人前がダメなのを察した。
そのギャップを知った私は、それから毎日のように高杉の元へ顔を出しに行った。最初は興味半分、冷やかし半分の気持ちだった。しかし嫌がりつつも少しは返事をしてくれるようになり、今では普通に会話が出来るまでになった。それがなんだか私だけ特別な感じがしてちょっと嬉しかったりする。
「少しだけ顔を出してくれればいいの」
「…」
「わかった、私が隣に座る。そうしたら問題無いよね」
「行かねェ」
本当に困った。ポケットにある携帯が引っ切り無しに鳴ってるので、たぶんまだかというヅラからの催促コールだろう。まさに板挟み状態である。それを察したのか、高杉が私のポケットから携帯を取り上げて勝手に電源を切ってしまった。
「これで終ぇだ」
「ったくもう、返してよ。私が怒られちゃうの」
すると急に起き上がって私と向かい合う状態になった。彼にじーっと見られる事なんてあまり無いので思わずたじろぐ。
「俺がなんで今日学校来たか、わかるか」
「…わかんない」
「今日はただお前と居たかっただけだ。他の奴らなんざどうでもいい」
微笑みながらそっと頬を撫でられた私は、自分の鼓動がうるさく鳴り響いてて息苦しささえ感じる。でも少しずつ理解してきて嬉しさがこみ上げてきた。
「…行かなくていっか」
キミがいる、それだけでいい
企画「すぎたん!」様へ提出
お題 : 社会恐怖症
HAPPY BIRTH DAY SHINSUKE!!
素敵な企画にお声かけてくださった東堂さん、読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。
2014.8.10