一口くらい、ええやん


あの告白から数週間たち、私とアントーニョはコンビニにいた。
結局アントーニョは告白に気付かないという衝撃的展開に導いてくれた。
だが、アントーニョを諦めきれるわけもなく、気付くまでアピールすることにしたのだ。
…が、悲しいことに彼は気付かない。
そりゃあもう、全く。
先ほどコンビニで買った肉まんを食べながらも試行錯誤していれば隣から甘ったるい香りがした。
甘ったるい香りの正体はアントーニョが持っている餡まんで、甘党である彼は美味しそうに餡まん頬張っていた。
猫舌の私とは違ってがっつりと食べるアントーニョを思わず可愛いな、と思ってしまう。好きになった人が輝いて見えたりする、というのを聞いたことはあるが大方間違っていない。
そのうちにもアントーニョは餡まんをたいらげ、餡まんについていた紙を寂しげに見つめていた。
「早ッ」
「やって美味しかったんやもん。」
仕方あらへんわ!、とアントーニョは笑いながらも私の手元の肉まんを見つめる。
「?なに?」
「口直しに一口食べてええ?」
アントーニョの言葉に私は思わず放心した。
今、なんと?
「ちょっ…!!」
慌てて断ろうとしている間にアントーニョは私の肉まんにかぶりついた。
目を見開いて口をパクパクさせる私に、アントーニョはまるで悪戯が成功した子供のように笑うのだった。
「一口くらい、ええやん。」

心臓がもたない!!


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