「不審者?」
「あぁ、最近多いらしくてな。」
「春だっていうのに…いや、春だからかなぁ」
「とりあえず、連絡頼むぞ」
「りょーかい」
そう言ってプリントの束を希汐に差し出した土方は背を向けた。
渡されたプリントを手に階段へと足を進めた希汐の後ろで土方があ、と言葉を零す。
「希汐」
「ん?なに?」
「今日は氷室とでも帰ってろ。五十嵐もな。」
「見回りは?」
「女だろ、お前らは。」
ひらひらと手を振った土方が歩き出す。
その後ろ姿に希汐はクスリと笑い、背を向けた。
 
風紀委員の仕事は朝と放課後が主な活動時間となっている。
朝は目だった風紀違反の生徒を注意し、放課後は戸締りや生徒が残ってないかの見回り。
見回りと言ってもその後、担当の先生がするのだが風紀委員と先生での見回り時間の差は3時間ほどは間がある。
そのため風紀委員は見回りも含めて活動しているのだ。
希汐は渡されたプリントに目を通しながらも足を勧める。
プリントに記されたのはここ最近不審者が多発しているため、納まるまでは早めに生徒を下校させるというお知らせのプリントだった。
不審者はどうやら女子生徒にセクハラ行為をしたり、暴行をしたりと穏便なものではない。
そのため土方は、家が近くそれなりに喧嘩なれした悠を連れて桃と帰れと言ったのだろう。
土方の気遣いの無駄はしたくないなぁ、と希汐は少しだけ頬を綻ばせながらも、プリントを配りまわるべく1年の教室へと向かった。
 
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