第1話
桜舞う季節に
俺たちは出会った
第1話
通い慣れた通学路。自転車をこぎ、俺は学校へと向かった
あかん、もう遅刻決定やな…
今日は高2の始業式。なぜかこんな日に限って寝坊してもうた。おかん、はよ起こせや!
そんなこと思って自転車をとばしとったら、桜の花びらが風にのって飛んできた
飛んできた方向を見れば、坂の上にある神社の桜の木からやった
「毎日通っとるのに気付かんかった、もうそんな季節なんやな」
道路から神社を見上げたら、淡いピンク色の髪をした巫女さんが桜の木の傍に立っとった
俺はなにか引き込まれるものを感じた。咲いてる桜か傍におる巫女さんかはどっちかわからんけど…
それからどのくらい経ったんやろ。ただその巫女さんをずっと見つめとった
こっち向いてくれへんかなー、なんて冗談半分に思っとったら目があった
そりゃびっくりして、開いた口が閉じんかったわ。ああ、せっかくの男前が台なしや
「こんにちは、桜綺麗ですね」
俺がそう言えば、今度は向こうが驚いた。まあ急に知らん高校生に声かけられたら誰でも驚くか
その人は、ただ笑いながら頷いた。桜の花びらが風に乗って、また俺までとんできた
もう一度神社を見れば、さっきの巫女さんがいなくなっとった
「いつの間に…あかん!学校忘れとった!!」
時計の針は9時半を指そうとしている
気になったけど、今は学校のが問題や。もう始業式には完全に間に合わんな
自転車に乗り、学校までの道を急いだ
後ろでさっきの巫女さんが笑ってくれとる気がした
これが俺たちの出会いやった
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