2色






重なる偶然が引き寄せた








今日は特に用事もなかったのでバイトをいれていた。バイト先は美味しいと有名なケーキ屋さん。土日にはケーキバイキングもするのでそれなりに人手が必要になる。






「いらっしゃいませー」


「食べに来ちゃった、でねでね今日はお客さんも連れてきたよ!」


「一応八知もお客さんなんだけどね」


「ここ有名だから来てみたかったんだよな、俺丸井ブン太。シクヨロ☆」


「仁王雅治じゃ、ブン太の保護者兼付き添いのようなもんじゃ」


「柊咲夜です、取りあえず席に案内するね」






席に案内し、バイキングの説明をすると仕事に戻る。仁王くんを見たときはこの前のこともあり気まずくなるかと思ったけど、何も言われなかったのでほっとした。






「咲夜さん、皆さんと一緒に食べて来ていいですよ」


「今はバイト中ですし、あたしなら平気ですよ」


「もうお客さんもまばらだし私ひとりでも大丈夫なので食べて来て下さい」


「でも……」


「じゃあ今日のバイトはこれで終わり、ケーキの感想を私に教えてもらえませんか」




店長の好意でケーキを食べさせてもらう。気が引けたけど、今日は甘えさせてもらうことにした。






「一緒に食べていい?」


「バイトはいいのかよぃ」




手と口を忙しそうに動かしながらブン太が声をかけた。




「うん、そのかわりケーキの感想が欲しいんだって」


「ほれ、ケーキ。適当に取ってきたから気にいらなかったらすまん」


「ありがと、それにケーキ全般好きだから大丈夫」


「ふぁあいっひょにはえろーふぉ(じゃあ一緒に帰ろーよ)」


「口の中を片付けてからしゃべりんしゃい」


「いいよ、じゃあ先に着替えてくるね」


「通じたのかよ!てか汚ねぇ」








バイト着の黒いウエイター服から、私服に着替えて3人のところに向かう。




「店長、ケーキ最高に美味しかったです!」


「ならよかったです、今度新しいケーキの試食お願いしたいんですがいいですか」


「はい、喜んで!」




軽く挨拶をして店を後にする。八知とブン太はまだ食べ足りないらしくこれからクレープを食べに行くといい途中で別れる。




「ブン太って男の子なのに凄い甘いもの好きだよね」


「試合前にケーキ食べとるときもあったのう」


「それはちょっと…。じゃあ今度八知とケーキの差し入れ行こっかな」


「柊と八知なら歓迎するぜよ」


「えへへー」




それからは昨日みたテレビや好きな音楽のことを話したりした。意外と趣味が合い話も盛り上がる。




「そう言えば仁王くんは家こっちなの?」


「ああ、学校は電車で通っちょる」


「毎朝ごくろーさまです。あたしも家そっちだから、途中まで一緒に行こー」




たわいのない会話をしながら歩いているとあっという間に家に着いた。




「ここが柊の家か」


「仁王くんもこの近く?」


「もう見えとるぜよ」




仁王くんの指した先は最近立ったばかりの真新しい向かいのマンション。確か家賃とか凄い高いはずじゃなかったっけ…。




「うわー、偶然にしては重なり過ぎだよね」


「だって今日バイトいれてなかったら、こうして会うこともなかったし、家も知れなかったもん」


「俺もそんなもんぜよ、気が向いたらいつでも遊びにきんしゃい」


「徒歩一分だしね」


「そうじゃの」




またな、とあたしの頭をくしゃくしゃと撫でてからマンションに入って行く仁王。
少し冷たい大きな手、目を細めて笑う仁王。




ドキ…




この感情に気付くのはもう少し先のことだった。








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