池田屋に討ち入りして以来聡美の様子がおかしい。
なんつうか、いつも以上におかしいんだよ。
「聡美、それうまいか?」
「え、普通においし……おえっ、あまっ!」
ほうれん草に黒蜜かけてりゃそうなるだろうな。
まだこれなら可愛いもんだぜ。昨日なんか、
「へぇ、あの土方さんがねー。あたしにはいっつも怒声とばすくせに、」
千鶴と話してるのかと思って、ちょっと声かけようとしたらあいつ誰と喋ってたと思う?
「ワン!」
犬ううううう?!
兄ちゃん本当に泣きそうになったぞ。
「つーわけで、なんかみんな思いあたることないか」
広間には俺に新八、平助、総司に齋藤。
聡美は千鶴と一緒にお使いに行かせた。
「最近僕がからかっても反応ないんだよね。抵抗もしないし、受け流すだけ。つまらないったらないよ」
「それ、総司が鬱陶しくなって見捨てられただけじゃね?」
「平助、その舌切り落としてあぐようか」
「やめておけ、総司」
総司が刀を抜く寸前で齋藤が静止に入る。
ちぇ、と刀をしまい座りなおす総司。
ったく、話が進まねぇだろうが。
「俺はこの襟巻きで鼻をかまれた」
「俺はいきなり犬みたい、て言われてお手とかさせられたぜ。しかも、やらなかったら叩かれた…」
「だはは、みっともねぇな平助!」
「なら新八っつぁんはどうなんだよ!」
「新八さん、この前聡美ちゃんに筋肉多くて邪魔て言われていじけてたよね」
「そこだけまともだな」
「お前らこの美しき筋肉美を馬鹿にすんなよ!」
脱ごうとする新八を宥める。て、全然話が進んでないじゃねぇか!!
「あの池田屋の一件がきっかけになったのは確かだとは思うんだがな」
「未来のことが関係しているのではないだろうか」
「聡美ちゃん、死んだ隊士のこと気にしてたみたいだしね」
沈黙が続く。
どうしたらまた前みたいに笑ってくれるだろうか。
一緒に暮らしてもう時代の壁なんてほとんどなくなったと思ってた。んな簡単なことじゃないのにな……。
「だれか!だれかいませんか!!聡美ちゃんが!!」
千鶴の焦った声が屯所内に響く。血の気が一気にひいていく。
俺たちは急いで玄関までむかった。
110329
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