碧空の下に君たち | ナノ






澄み渡る青い空の下、熱い戦いが幕を開けた。




「いちについてー、よーい…」




パン!




「あたたたたたた!!」


「赤組斗未さん速い!おっと、もうパンをくわえている。って何もう一個食べてるんですか!!」




速く走れ、と放送席から急かさる。




「走りだしました、なんとつまみ食いしていたに関わらず断トツの一位です!」




今日は庭王学園に入って最初で最後の体育祭。紅白対抗で行われているのだが、グランドにはなぜか殺気が流れている。






「なあ、体育祭何の種目出るか決めた?」


「まだなんだよね」




めんどくさい、と机に突っ伏す斗未。




「今年は優勝した組には焼肉食べ放題が付くらしいのぅ」


「「焼肉っ!!」」




机に突っ伏していた斗未と菓子を食べていた丸井が同時に立ち上がる。




「優勝するしかないだろぃ」


「よっしゃ、出まくって点稼ぐ!!」


「単純なやつらだな…」






優勝賞品として焼肉ということで、両チームとも燃えていた。学校をふたつに分けても相当な人数がいるのに太っ腹と言うか金持ち学校だと改めて実感してしまう。




組分けは、1組から4組が赤、5組から7組が白となっている。




「斗未、よう頑張ったな」


「焼肉が待ってるからね。ほら、次は仁王の出る種目でしょ」




点稼いでこい、と見送られて指定された場所まで向かう。




「仁王のやつ、斗未に応援されるなんて羨ましいことこの上ない!」


「いや、アレはどうかと。それにうちがいるじゃないか、ゆっきー」


「フッ、斗未じゃなきゃ意味がないんだよ」


「軽く傷ついたんですけど。あ、かばっち!」




抱き着けば受け止めてくれた。やっぱかばっちは優しい!




「うち、かばっちだけ応援してるから頑張ってね!」


「ありがとうございます…」照


「那璃って樺地みたいのが好きなのか」


「クス、樺地も変なのに好かれたね」


「お、俺次の種目だった。菊丸行こうぜ!!」


「おわ、宍戸。そんな引っ張んないで!」




いつからいたんだよ!
あのただならぬ殺気で不二に殺られるかと思ったぜ。俺、激ダサだな…。




「逃げなくてもいいのにな、クス」






「河村もこの種目なんか」


「ああ、気合い入れていかないとね」


「タカさーん、ほい。ラケット」




どこからともなく現れた斗未が河村にラケットを渡す。




「オラオラ、優勝して焼肉だ、ベイビー!!」




パン!




「斗未、ずるい…ぐはっ!!」


「斗未にそんなこと言うなんていい度胸だね」




真田、意識不明により棄権。




***





「リョーマに、長太郎ファイト!」


「種目で学年関係なしってスケール大きいよね」


「アーン、これくらいなんてことないだろ」




那璃と合流して涼しいテントの下で休憩していれば、あちょべ様に遭遇した。常識が外れているにも程があるでしょ。
現在もパラソルの下でハワイのビーチで飲んでそうなブルーなドリンクを優雅に飲んでいる。




「ここグランドだよね、体育祭中だよね?」


「フッ」




は、鼻で笑われた…。跡部なんかに庶民がわかるわけない。こうなったらけちょんけちょんに負かして…て同じチームだった!




「あ、借り物始まったみたいだよ」


「誰かダルマ持ってませんか!!」


「斗未先輩、ワカメ持ってないっスか?!」


「あるよ、ほら」




借り物競争中に走ってやってきた切原。斗未の指差した先には切原の髪の毛があった。




「ぶっ!」


「あんたら潰すよ…」


「でも、早くしないと負けちゃうよ?」


「チッ」




そのままゴールに走って行く切原。その後を追うようにダルマを持った柳生が続けてゴールする。




「え、ダルマなんて持ってる人いたの?!」


「切原のやつ、マジでゴールしたぞ」


「あれでいいのかよ!!」




ピーンポーンパーンポーン




「皆さん楽しんでますか?借り物競争の途中ですがルール変更になりまーす」


「走ってカードをとるところまでは同じです。カードには借りてくる人とある命令が書かれてます。命令は借り人とやりながらゴールして下さいねー」


「では、どんどん盛り上がって行きましょう!!」




「無茶苦茶だろぃ」


「でもでも楽しそうだCー。頑張ろ、丸井くん!」




とりあえずスタートして、紙をとる。
えーと…、自分より背の低い人と校長のかつらを取ってくる。ふーん、うえええ!!




「や、焼肉のため…。だああ、那璃ちょっと手伝え!!」


「ブンちゃんなにしてんのおお!!それ早く返して!!頭がカッパになってるからっ」




校長に追われながら、ゴールした丸井ペア。




「ありがと、宍戸」


「簡単なのでよかったな」


「何この差!お前なんだったわけ?」


「帽子被ってる人と縄跳びだよー」


「あ、言い忘れてましたがカードは当たり外れが激しいので簡単なカードを引くように頑張って下さいねー」


『それは早く言えよ!!』


「あ、精市と仁王同じレースだ」




パン!




「「!!」」




カードを手にするところまではよかったが、急に幸村と仁王が固まってしまった。動き出したかと思うと急に斗未たちが休憩しているテントへと向かってくる。




「「斗未、来て(んしゃい)!!」」


「え、あ…ちょ精市!!」


「しばらくこうしててね」




幸村の肩に急に担がれたままゴールへと向かう。




「幸村、すまんが借りるぜよ」


「んぎゃっ」




あれよあれよと言う間に幸村から仁王の腕の中に移動する。属に言うお姫様抱っこの状態になる。




正直かなり恥ずかしい。周りからの視線も痛い。




「んぎゃー!無理無理、…恥ずかしすぎて口から胃が出るっ」


「それはしまっとき。恥ずかしくて胃が出るなんて聞いたことなか」


「はー、しょうがない姫様じゃな…」




渋々だが仁王が降ろしてくれた。そして右に仁王、左に幸村と手を繋いで3人でゴールインする。




「生きた心地しなかった…。そういえばなんて書いてあったの?」


「おもしろい人と漫才をする」


「天然記念物を抱えてくる」




このめちゃくちゃな借り物もとい借り人競争なんなんだ!!




「天然記念物とかもはや人じゃないじゃない!しかも、あたしは天然記念物かよ。
それに、漫才なんか第一してないわよ。カードにこれ書いた人誰?!
あんたたちも勝手に解釈し過ぎでしょ、最近あたしの扱いかた酷くない?!
てか審判もつっこめぇぇぇ!」




マシンガントークで一気に言い切り、肩で荒く息をする。




「会話自体が漫才だから大丈夫だよ」


「斗未が天然記念物じゃなかったらヤンバルクイナは天然記念物じゃなか」


「あたしヤンバルクイナに負けてんの!!」




「午前の部は終了しましたー、午後は……」




まだまだ体育祭は始まったばかり。こんなので本当大丈夫な「わけないからああ!」





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加筆修正11.01.21


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