柳生夢 微裏?




いつからかと聞かれれば
いつからだろう。あるい
は、チームメートでダブ
ルスのペアの一癖どころ
か二癖も三癖もある仁王
君に紹介されたその瞬間
からだったかも知れない

感情を表に出し感情のま
まに笑ったり怒ったりす
る彼女の表情は、良くも
悪くもその時の感情の赴
くままに形を変える。
今でも初めて会った時の
彼女の顔は、忘れられな
い。訝しげで「なんだコ
イツ」と声に出さずとも
語っていた。
いつも通りに紳士に振る
舞った俺に対して初対面
でそんな表情をした人間
は、彼女が初めてかもし
れない。
その後も差し障り無く紳
士に振る舞うも俺に会え
ば彼女はいつも苦虫を噛
み潰したような顔をする

一度仁王君にその理由を
尋ねたが彼女の本能には
偽紳士もお手上げじゃと
言われた。そう。彼女は
初めて会ったあの時から
仮面の裏を本能で感じて
いたのだろう。
そして今も廊下で偶然で
運命的な出会いを果たし
たと言うのにまるで世界
の破滅を見たような顔を
している。

「こんにちは」
「半径3メール近寄らな
いで」
「ひどいですね。私とあ
なたの仲なのに」
「誤解を生む発言をする
な。しゃべるな。話すな
。息するな」


ジリジリと後退する彼女
に笑顔で1歩近づけば3
歩下がられた。まるで野
生の獣のように警戒する
彼女が楽しくてまた近寄
ってみる。
今度は2歩。
そうすれば5歩下がる彼
女。
端から見れば異様な光景
だか日頃のおこないがい
いせいか好都合にも周り
には誰もいない。むしろ
この階には誰もいないで
あろう。


「何故下がるんです?」
「何で近寄ってくるの」


ジリジリとした攻防戦も
5歩近づいた俺が勝った
。彼女の後ろは、社会科
資料室で。左側は壁。正
面には、俺。
そう、逃げるなら右側に
走ればもしかしたら逃げ
られるかもしれない。
ちらり泳ぐ視線となびい
た彼女の細い髪。


「残念でした」
「はーなーしーてー!!」

難なく捕獲した彼女の細
い腰を引いて社会科資料
室のドアを開ける。
埃臭いがまぁ、良しとし
ておく。


「離して!!こんなトコ
連れ込んで何する気!?」
「おや?あなたが期待し
ている事ですよ?」
「柳生の死?」


想定の範囲内の解答をど
うも。



「逃げて下さい」
「逃げてるし。今まさに
アンタを殴り倒して逃げ
ようとしてるし。お前の
目は節穴ですか?」



俺の腕の中で力いっぱい
抵抗する彼女が楽しくて
仕方がない。
今までの女性はこうやっ
て腕の中に入ってしまえ
ば従順に尚且つふしだら
に綻んで行くと言うのに
彼女はどうだ。今まさに
自分を殴り倒さんと抵抗
している。面白い。


「早く逃げないとキス、
しちゃいますよ?」
「ひぃ!?はなせ!!」



頭の中でカウントダウン
が始まる。


ごう、よん、さん、にい
、いち、ぜろ




無理やり彼女の顎を掴ん
で唇を重ねれば彼女の肩
がギクリと揺れた。
彼女を後ろの棚に押し付
ける様に抑えこめ長く長
く口付ける。
出来るだけ扇状的にいや
らしく舌を絡め歯列をな
ぞる。


一瞬の様な永遠の様なキ
スは今ここが誰が来るか
わからない資料室だとか
、嫌がる彼女を無理やり
だとか言う背徳的なシュ
チエーションと合間みあ
って俺自身を熱くした。



「…残念。タイムアップ
です」
「…はっ…」


彼女の潤んだ瞳と唇が欲
望を掻き立てる。
と同時に脇腹に鈍痛。
やられた。また油断した



「っ!!アホ!!変態!!似非
紳士!!シネ!!」


バチンと右頬を叩かれた
かと思うと颯爽と出て行
く彼女。
そんな彼女が出て行った
ドアを見つめ知らず知ら
ずに笑みがこぼれる。
これでこそ彼女だ。
どんなに惑わしてもぼや
ける事の無い彼女の色。
どんなに汚そうとしても清らかなままに自分
の意志を曲げない彼女。

欲しかったたった1人が
見つかった気がした。





END





jeshicaの一嘉様よりメルマガリクとして頂きました!!















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