柳夢
「………」
「…なんだ?」
「いや……」
「そんな顔で見つめられると気になるのだが」
「見つめてない見つめてない!」
日誌を書く蓮二は手を止めず私を見上げる。
…見上げたと思う。
てか、さっきはむしろ私はしかめっつらで睨んでた気がする!
「…蓮二の開眼シーンをカメラに収めようかと…」
「阿呆か」
「うっ」
苦しい言い訳をしてみた私が馬鹿でした。
あのね、
「やっぱりテニス部人気あるなぁと思って…」
「いきなりだな」
放課後の教室には私と蓮二しか残っておらず、窓からは西日が差して教室を夕焼け色に染めている。
なんかいいな、こういう雰囲気。
日直だった蓮二は担任に提出する日誌を書いている。
今日の部活はミーティングだけだったから、いつもより時間の流れがゆったりとしている気がする。
「…で?」
少し口を止めた私に蓮二が相槌を打つ。
「モテてんのちくしょーと思いました」
「…なまえは女だろうが」
「いいじゃない、別に憧れるくらい」
「憧れているのか?」
変な奴だな、と蓮二がフッと笑った。
うわぁ、かっこいい…
「…と。よし、日誌を提出してくるから先に行っててくれ」
「はーい」
パタンと日誌を閉じて、蓮二が席を立つ。
私ものろのろと立ち上がり、言われた通りに教室を出た。
「待たせたな」
「うん、平気」
ゆっくりと、蓮二と並んで歩く。
時々ちらっと横目で蓮二を見ればそこには夕日に照らされた綺麗な顔があったりして、私はノックアウトされましたとさ!
いちいちかっこいいのってどうにかなりません?
「私大変なんですけど」
「どういう流れでその言葉が出てくるんだ」
「ごもっともですー」
こんな気持ち悟られたら絶対馬鹿にされる!
蓮二のことだ、何かにつけていじられるに違いない…!
なんてことを考えてみたりして、あぁ、やっぱり私馬鹿かなぁとか思った。
「…本当になまえは百面相だな」
「へ?」
「お前がそんな顔をしているときは俺に関することを考えている確率…92.5%だ」
「くぅ…さすが蓮二」
「…否定しないとは、珍しいこともあるんだな」
「私いつもそうだっけ?」
「あぁ。いつも違う違うと赤くなるのに」
ちょ、マジか!!
全然気が付かなかったよ!!
うーぁーと自分でも意味不明な声を漏らしながら、照れ隠しに蓮二の左腕に思いきり抱きついた。
蓮二に自分のことを言われるとどうにも恥ずかしくなってしまって……だから多分、いつも違う違うーって言ってたのかもしれない。
「…つくづく面白い奴だな」
「え………っ」
ふっと私が顔を上げると、
スッと顎を上向きにさせられて、
そのまま 蓮二が私に重なった。
「……っ」
暫くすると蓮二は静かに私から離れていく。
そして、
「あんまり可愛い行動とると、またするぞ」
「!?」
「キス」
ニッと、珍しく蓮二が、とてもとても楽しそうに笑った。
「…っこのデータマンめ!!」
「どうぞなんとでも」
悔しかったから、私からもしてやった。
そうしたら、蓮二はなんて言ったと思う?
「…うむ、計画通りだ」
…だーめだ、私はこいつから抜け出せそうにない。
だいすきだよ、蓮二!
純 蓮 歌
(ていうかね、私のどこが好きなのか聞きたかったの)
(何故だ?)
(…蓮二だってモテるじゃない)
(心配するな、お前以上に俺を引き付けた奴はいないよ)
風船花火の香月様から相互記念に頂きました^^
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