「ねえねえ、ここ教えてー」
「そこは、卑弥呼じゃろ」
「ばか、生物になんで卑弥呼がでてくるのよ!!」
「ぷりっ」
こんな会話が日常茶飯事。冗談言っては笑い、からかっては、からかわれの繰り返し。
「あ、あの…」
「いってらっしゃーい」
「まだなんも言っとらんぜよ」
「見慣れてんだから、わかるっての。ほら、姫がお呼びですよー」
「すぐ戻るから待っといて」
適当に答えて、大きな背中を送り出す。呼び出されては告白される雅治もいつものこと。そして、その女の子をふるのもいつものこと。だから、ああ言う言葉がでるんだろう。
「いつになったらあたしの気持ちには気付いてくれんのかねー」
詐欺師と言われる男だし、もう気付いてるのかもしれない。
告白して今の関係が崩れたら……。そう思うと一歩踏み出せなかった。だから、気持ちを相手にぶつけられる彼女たちが羨ましかった。
「友達でいいから傍にいたいだなんて、我が儘なのかな…」
「俺は不満なんじゃがの」
背中に伝わるあたたかさと心地よい重み。
「いつからいたのよ」
「それは秘密ー」
ため息をひとつ。
「なあ、なまえ。なんで友達でいいんじゃ?」
「知ってるくせに」
「知っとうよ、なまえのことならなんでも。どうして俺が毎回ふってとるかわかるか?」
「んー、めんどくさいとか」
素直に言えば頭を叩かれた。違うらしい。どうやら他に理由があるようだ。
「俺の隣にいるのはなまえだけでいい、てことぜよ」
「冗談も休み休み言わないとバカになるよ」
手を振り払い、席を立てば後ろから抱きしめられる。
「ならなんでそんなに動揺しちょる。お前の負けぜよ」
「なまえ、こっちむいて。信じられんなら何回でも言っちゃるわ」
「仁王…」
「好とうよ、誰よりも。俺の隣はなまえだけじゃよ」
「ずっとずっと好きでした…大好きだよ、雅治」
繋がった影はあたしたちを包み込んだ。
隣同士が
1番自然君が隣にいないなんて
考えられない。
10.07.12
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