「最悪……」


降りしきる雨。委員会があったせいでいつもよりも下校が遅くなった。


鞄を覗いても折りたたみ傘が見当たらない。


「ついてないなー」


「あれ、なまえやん。今帰り?」


「うん、委員会あってさ。忍足こそ部活は?」


「雨だからミーティングだけやったや。それにしてもやみそうにないな」


並んで鉛のように重たい空を見上げる。大粒の雨が叩きつけるかのように降る。


「忍足、傘ないの?」


「朝遅刻しそうになって慌てて出てきたからな」


「へー、意外。忍足でもそんなことあるんだ」


「そういう自分も傘ないんやろー」


「あは、ばれた?」


小降りになるまでしばらくの間待つことにした。
誰かが来てくれることも期待したけど、なんせ下校時間帯をすぎた今。おそらく部活してる生徒くらいしかいないだろう。


「やまないなー。てか寒い」


「冬近いしな。手袋持ってないん?」


「マフラーだけで大丈夫と思ったあたしが馬鹿でした」


そういえばしていた手袋を片方渡された。思考回路が停止したまま忍足を見上げたら、手袋を左手につけてくれた。


「少しはましやろ」


「ありがと、てうおお?!」


「こうすればもっと暖かいで」


空いた方の右手を握られたかと思うと忍足のポケットへと。


伝わってくる忍足の手は暖かった。心臓はうるさく騒いで、それを悟られまいと下を向いた。顔に熱が集中する。


「ねえ、こういうのはあたしなんかにしちゃ駄目だよ」


「どないして?嫌やった?」


「嫌じゃないけど…」


「ならええやん」


「なんか機嫌いいね」


「なまえと一緒だからやない」


「なにそれ」


ふたりして笑えば、大粒だった雨も小降りになっていた。


「##NAME2##、走るで」


「侑士があたしのこと考えて走ってくれるなら」


「ほな、行くで!」


握った手を握りしめて、小雨の中をあたしたちは走った。






好きかも、しれない



くっつくまで後少し





09.12.10










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