「なまえいるかい?」
びくっ!いつものよう"渋々"席を立ち、呼ばれた主のもとへと。行かないと後が恐いからね!でも行きたくない。
それはそれは毎回刺さるような視線をあびますよ。
「なな、なんでござりましょう。あたくすは用事などございませんので失礼したい、てか関わりたくないんですけどー」
「じゃ、行こうか」
どこに?てか前半にあたしが言ったこと聞いてましたか?おーい。
「あんまりうるさいと全校生徒の前で校歌歌わせるよ」
「それは勘弁して下さい」
幸村に手を引かれながら校内を歩く。
そこのお嬢さん、全部聞こえてますから。誰がブスじゃい!確かに可愛くも綺麗でもないけど人並みですから!
羨ましいなんて声が聞こえてくる。
いやいや、騙されちゃダメだって。普段はいい人ぶってるけど中身これだからね。
黙ってりゃかっこいいのに、一枚めくれば魔王様だから。
「俺のことかっこいいって思ってんだ」
「まあ、性格除けば…ね」
「ふーん」
それだけ?今度は鼻からマカロニ出せ、とか言われると思ったのになにも言われなかった。
「やりたいなら用意させるけど、ジャッカルに」
「あたしの心を読むなあああ!!」
そんなこんなで着いたのは、
「なんで屋上?」
「サボるからに決まってるじゃないか。ああ、俺なら保健室行く、て言ってるから大丈夫だよ」
「勝手なこと言わないでよ。あたし授業あるし、サボるならお一人でどうぞ」
「先生にはなまえは家で飼ってる蛙が死にそうだから早退する、て言っておいたから大丈夫だよ」
大丈夫じゃねえええ!
なんで蛙?!いや、死にそうとか以前に飼ってませんからね!
「先生、信じるわけないじゃん」
「あの子なら有り得るわねー、て言ってたよ」
マジかよ!あたし普段どんな風に見られてんの?!
「そこ座って」
もうなんかどうでもいいや。サボることを決め、幸村の隣に腰を降ろす。ため息をするのも忘れずに。
「疲れてるようだけど」
「誰のせいだよ。そして、これなに?」
足を延ばして座れば、幸村が頭をのっけてきた。世間で言うひざ枕。
「なまえの太ももぷにぷにしてるー」
「殴られたいの?」
「俺を殴れるなんて思ってるの。ああ、気持ちいいー」
くっ、殴れるわけないじゃないか!!
「おわっ!ちょ、手!!」
今度はそのまま手を腰にまわす。腹と幸村の顔が密着するわけで、
「く、くすぐった…ぎゃははは」
「ねえ、好きだよ」
「うん、知ってる」
「俺のことを全部知ってるのはなまえだけでいい」
「はいはい、でもあたしはただの小市民ですからね」
「俺にこびない、自分を貫き通す小市民だから好きなったんだよ」
「あたしは平和に過ごす小市民でいたかったわよ」
「ふふ、無理難題だな」
目指すは小市民
小市民からそうでなくなった日
あたしは幸村精市の
彼女になった
09.12.16
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