act.10

感じてるのは、


「……青学って青春学園の略だったんだ」
「お前さん今恥ずかしい名前とか思ったじゃろ」


どうやら顔にでていたらしい。
今日は初めての練習試合。
うぅ、緊張してきた……。

テニスコートにつけば青いジャージの人たちが打ち合ってる。
混じってる女の子たちがペア子なんだろうな。
にしても……


「ちょ、レベル高っ!
あたし素人だって忘れてない?」
「ふふ、大丈夫。
俺を信じて、律」
「幸村」


青学顧問の先生かな。
わあ、背高いなー。


「やあ、手塚。
久しぶりだね、今日はよろしく頼む。
律、こちら青学部長の手塚」
「ぶっ、部長おおおお!!
顧問の先生じゃないの?」


まわりから笑い声が聞こえてくる。
はっ、やってしまった!


「ご、ごめんなさい!
あの凄く大人っぽくて、落ち着いてたから…」
「いつものことなので」
「あ、あたし手塚くん凄く素敵だと思います!
だから、えっとその……元気だしてください?」


あれ、手塚くん顔赤いんだけどどうしたんだろ?
なにかまた変なことでも言ったのかな。汗
ゔっ!
背筋に寒気を感じる。
もちろん精市が原因だ。


「手塚、こちらは俺のパートナーの律」
「よろしくお願いします」
「はい」


ぺこんと頭を下げて、手塚くんと握手をかわす。
おー、手も大きい!
そろそろあたしも準備しなきゃ……。
ふたりと別れて、みんなのところに走りだす。


「さすが律。
あれは幸村が怒っても仕方がないだろぃ」
「お、タルトもーらいっ!」
「おわっ、いきなりあらわれんなよ!
つーか、タルト返せ!」


ギャーギャー言いながら、ケーキ取り合ってたら真田からげんこつが落ちた。
今はふたりして正座しながら説教されてます。
赤也め、爆笑しやがって!
後でいじめてやろうかな。
青学の人にめっちゃ見られてるのは気のせいだ。

ストレッチやラリーなど準備を終えれば、試合開始のホイッスルが鳴り響いた。


「精市、地面が揺れてるっ…」
「揺れてるのは律自身だから」


未だガタガタ揺れてるあたしの手をとり、コートに入る精市。
目の前には可愛い男の子と女の子のペアがいた。


「あんた素人って本当?」
「うん、ど素人!」
「ふーん」
「ちょっとリョーマくん!
あの、すみません!」汗
「ふふ、大丈夫だよ。
よろしく頼む」
「は、はい!」


堂々と素人宣言したら流された。
生意気だけど、可愛いから許す!


「律、いつも通りやれば大丈夫だから」
「がんばるっ…」


精市の手がぽんぽんと肩に触れれば、すぅーっと力が抜けていく。
大丈夫、あたしならできる!


「行くよ」


ドシュッ!
テニスボールの乾いた音がコートに響く。


あれ…?
もっと速いと思ってたのに、これなら立海のみんなの方がもっと速いよ。


「律!」
「ハッ!」


パーン!


スマッシュがコートに決まる。
なんだこれすっごい気持ちいい!


「へぇ、あんたやるじゃん」
「ありがとー」笑


初めの緊張が嘘みたい。
後ろに精市がいてくれる。
そう思うだけで、凄く安心してる自分がいる。
身体が軽い。
テニスってこんなに楽しかったっけ。


「リョーマくん、スマッシュくるよ!」
「わかってる」
「なーんつって」


スマッシュを打つふりをして、ドロップでネット際にわざとボールを落とす。


「律、大分ましになったね」
「うん、初めはドロップなのにコートの真ん中あたりにしかいかなかったもんね」笑


「ほう、高野律か。
おもしろい、いいデータがとれそうだ」
「乾先輩、あれで素人とかありえるんすか?」
「素人はいわば、乾いたスポンジだ。教えて、練習すればするほど吸収していく。
だが、それだけではあそこまで上手くならない。少なからず基礎体力や能力も関係してくる」
「その通りだ、貞治。律のデータを取ろうとしてるようだが無駄だ。彼女は日々成長し続けている」
「そうか」


バシン!


ゲームセット 6-5 幸村・高野ペア


「ありがとうございました!」
「次は負けないよ」
「あたしたちだって負けないよ。ねっ、精市」
「もちろんさ」
「まだまだだね」
「もうリョーマくんってば……」


コートを出ればワカメが、ぶふぉ!抱きついてきた。


「律先輩、俺たち勝ちましたよ!
あ、先輩も初勝利おめでとうございます!!」
「ありがとう、赤也」


柳や赤也のとこも順調みたい。

時間の限り試合をしたり、みんなの試合を応援したりして過ごした。
立海に劣らず青学も個性的。
ただ、みんなあたしと話してると途中から逃げるように去っていくんだよね。
うーむ、不思議だ。


「今日はありがとう」
「ああ。また、大会で会おう」
「楽しみにしてるよ」


「さあ、帰ろうか」


バスに乗りこむ。

試合は勝ったり負けたりだったけど、いろいろ次の課題もでてきてためになった。
また明日から頑張ろう。

揺れるバスの中で静かに目を閉じた。

もっと強くなりたい。






110910

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