自覚症状ゼロ


「どうも、穂南です。夏休みは変にあいつを意識してしまってどうしようとか考えていた内に夏の一大イベントを逃してしまいました。もうどうしてこうなった。意味が分からないよ。もう何を糧にすればいいんですか!!」


と、訴えたら宗助が姉から譲り受けた大量の薄い本をくれた穂南です、こんにちは。


なんて現実逃避をしながら一人パソコンに向かっていた。見ているのは購入できなかった大好きなサークルの作品である。どれもが素晴らしいもので買いに行けなかったことに後悔するが、穂南はそれどころではなかった。
最近、いや、香坂と出掛けてからというもの胸が苦しいばかりだ。ふと気付けば香坂のことばかり考えていて、いやいや有り得ないだろうと否定する。

そんな感じで日常生活もふわふわしていた。いつものように葉月にセクハラされそうになっても無心で仕事をしていたり、癒しである二人に話し掛けられても呆けたままだ。

そういえば谷原にも変だと言われてしまった。ちなみに谷原とは頻繁に遭遇するため何気無く薄い本を貸したら予想外にハマったらしい。もう王道ではなくなってしまったがナイス自分と再び現実逃避をしてみる。


それから数日後のことである。


「まさか穂南が恋をするとは」


「いやいや私はノーマルです。というより恋?!」


もやもやしていたときに、二宮からそう言われた。二宮は相手は三人のうち誰なんだろうなと楽しそうに話す。聞きたくないが二宮は勝手にその相手をばらしてくる。


「フェロモン垂れ流しセクハラ大魔王な委員長に絆された?」

「葉月は有り得ない」

「あははっ、即答とか委員長ざまーみろ!じゃなくて、違うなら会長とキスから芽生えた恋心だったり?」


あの時の唇のぬくもりに一瞬ドキリとしたが、それだけだ。実はファーストキスだったなんて言えるわけがない。
それに、あのときは初めてのことで心臓がバクバクしていて頭の中が真っ白だったから何も考えられなかった。ただ、これだけは言える。


「有り得ないし俺は委員長×会長を推してます。強気な委員長が俺様会長を捩じ伏せて『随分と可愛い反応するんだな』って笑いかけてときめいちゃったり!ああ、でも逆もいいよね。『素直に啼けよ』って言葉攻めしてくる会長に対して『誰がッ…、』って涙目で訴える委員長とかエロイと思うけしからんもっとやれ」

「うん、見事に振られたね二人とも。というか一人称変わってるし二人で妄想しないの、気持ち悪い想像しちゃうじゃん」


やれやれと肩を下げる二宮に、どうしてこのよさがわからないのかと訴えたくなってやめた。どうせ同志である宗助が同意してくれるから後で話せばいいからだ。


「それじゃあ、香坂かな」


その名前にドクリと心臓が波打ったことに目を見開くも、いや絶対違うと呟いた穂南に二宮は無自覚かなと笑った。


「俺はホモじゃなくてホモを見るのが好きなだけだから絶対に違う」

「こんな残念な副会長も王道なのかな?」


残念ながらその呟きは穂南に届かなかった。


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