そのまま会話を続けていたのだが昼食だというのに食べ始めない瀬名を待つためか同様に食べ始めない加藤に対し、食べなよとも言いにくく何となく会話の間にできる沈黙が辛く感じた時、ようやく恭介が戻ってきた。

「わりぃ、出遅れたみたいで目的のものは買えないわ他のものも買うのに手間取っちまってさ。…てか、え、お前って確か一年の加藤“だいき”だっけ?何でいるんだ」

「“ひろき”です。…あ、読み間違われるのには慣れているので気にしないでください」

瀬名と加藤は今日、初めてこの学園であったのだが恭介は違うのだろうか。以前からも加藤の話を恭介から耳にしたことのなかったために首を傾げていると、あほかとコツンと拳骨を落とされた。

「あのさ、お前はちょっと興味を持たなすぎるんだよ。こいつは一年生の中でも結構な有名人だろ」

「…知らなかった」

「ったく、悪いな加藤」

要するに、だ。
加藤は入学当初からイケメンだとか成績優秀者などと、いろいろなことに関して有名な人物となっていたらしい。
しかし女ではないしイケメンがいようが居なかろうが瀬名には興味がないし、聞かされていたとしても覚えていなかっただろう。
加藤のことを軽く教えられてから、今度は瀬名がバイトで知り合った例の子が加藤だったことを説明する。

「ふーん、こいつがねぇ。俺は武原恭介で瀬名とはそれなりに付き合いの長い友達…腐れ縁でもあるな。よろしく」

何故かわざとらしく瀬名の肩に腕を回して挨拶をする恭介に何がしたいんだと疑問も抱きながらも、瀬名は気にせず弁当を取り出した。
瀬名が弁当を取り出したのを合図に、恭介もパンを取り出した。加藤もまた食べ始める。
二人にとっては恒例の、恭介のあれが食べたいというのが始まるのも案外早かった。

「あ、美味そう。その卵焼き食わせて」

「またかよ…ったく、だから俺が弁当作ってきてやるって言ってるのに」

「……その弁当、渡辺先輩が作ってるんですか?」

「そう。瀬名の料理はマジで美味いんだ」

だから昨日は手際があんなにもよかったんですね、なんて褒め言葉を受け止めた瀬名は何だか擽ったい気持ちになりながら小さくお礼を告げた。



『―――連絡します。二年D組の図書委員会の生徒は、至急図書室へと来てください。繰り返します、―――』

昼休みが始まってしばらくしてから、図書委員の呼び出しの放送がかけられたために瀬名はその場から移動することになったため、二人よりも早く昼食を終わりに、その場をあとにした。


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