まあ数万円はした服だったのだが、その後にも靴を数点とバッグやアクセサリー何点かを神原は買ってしまった。
靴は知らないうちにサイズを知られていたようだ。俺の服の好みから選んだらしいバッグたちも、随分と素敵なデザインなため反抗する前に思わず気に入ってしまった。
「ふう、いい買い物をしたわね。満足したわ」
そういえば今更ながらショップ店員と話しているときはオネェ口調から男らしいものに変化していた。やはり恥ずかしいのか、どういう訳なのかは知らないが今は聞かない方がいい気がして黙る。
そうして再びお金の心配をしてしまう俺に、神原は静かに「ダメよ」と怒る。唇に、ふにっと指が触れた。
「そんな愚痴よりも違う言葉のが聞きたいわ」
「…あ、りがとう」
「ええ!どういたしまして」
そう告げたときの神原といったら今まで以上に爽やかに笑っていた。
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