おそ松さん | ナノ

私のことなんて嫌いでしょ?
「チョロ松くんって私のこと嫌いでしょ」

 僕の目の前にいる彼女、梓音ちゃんは少し悲しげな表情でそう告げた。「へ」と情けない声が漏れる。え、僕が梓音ちゃんを嫌い?いやいやいや!!なんでそうなるの!!!

「私がにゃーちゃんみたいに可愛かったらなあ」

 両手を頭にのせて「梓音だにゃん」なんて言っている。それウサギみたいだよなんてツッコミが浮かんだかそんなことよりもただたただ目の前の超絶に可愛い生き物を眺めていたかった。
 僕はとっさに、にゃーちゃんよりも梓音ちゃんの方がかわいい!嫌いなわけないじゃん!と伝えようと思った。しかし、僕がここであえて伝えないことによってもっと彼女の可愛い部分が見れるんじゃないか、なんてまともじゃない考えが浮かんだ。そしてそれはクズな僕にはとても魅力的で、即採用という判子を押していた。

「……チョロ松くん?はっ!ご、ごめん!私なんかがにゃーちゃんなんて言ってごめん!!!」

 本当に申し訳なさそうな顔に加え、上目づかいで僕を見つめてくる。正直こんなのニート童貞には刺激が強すぎる。耐えられるはずがない。

「……お、怒ってる?」

 しまいには縋るような潤んだ瞳でじっと見てくるものだから、一発K.O.だった。吹き出そうな鼻血を抑えて彼女の髪の毛をゆっくりと撫でた。

「(ぼ、ぼぼぼぼくいま梓音ちゃんに触ってる!!!!)」

 実際こんな思考回路だったんだけど、梓音ちゃんはそんなことつゆ知らず怒ってないと察したのかふにゃりと綻んだ。あ、今間違いなく彼女の周りに花が舞ったわ。


「嫌わないで」

 馬鹿だなあ。嫌うはずがないのに。

「……好きだよ」

 ぽっと口から出た言葉。自分自身でも驚いた。言わずもがな梓音ちゃんは目を見開いて「あ、え……」と喃語みたいな言葉を発する。そして即座に赤くなった顔を隠すかのように俯いた彼女に対し、僕は気の利いた言葉ひとつ言えず、童貞らしく追撃する他なくて。

「……ごめん、僕が梓音ちゃんを嫌うなんてないから」
「う、あ……。……うん」

 適度な距離を保とうと一歩離れた途端、彼女は寂しそうな表情に変わる。たたたっと駆け寄ってきてきゅっと抱き着かれる。……瞬間、理性が崩壊しかけた。なんとかなけなしの抑制をしていたところ、彼女が追い打ちをかけてくる。



「……私も好き」

 なんて言うから。僕は、力なく彼女を抱き締め返した。

 え、だからお前は童貞なんだって?うるさい!余計なお世話だよ!


 いいんだ、彼女が僕に「私たちの歩幅でゆっくり進んで行こうね」って女神みたいに微笑んでくれたから!!!!!!!


私のことなんて嫌いでしょ?
(いいえ、大好きです)
(童貞でもなんでもいいから彼女といたい)

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