おそ松さん | ナノ

迷走、奔走、翻弄
愛情、相性、合いそうの後日談です

おそ松:なあ、今日暇?
おそ松:だったら俺の家こねえ?

 カタッ。
 携帯を落とした。まさかお家に呼ばれるなんて思ってなかったので油断していた。大丈夫です、何時から行けばいいですか?と返信をすれば

おそ松:なんで敬語使うの!
おそ松:好きなときにきてくれればいいよ

 とかえってきたので、じゃあ、行くときに連絡するねとLINEを入れて準備にとりかかる。どうしよう、まだ心の準備ができてない。だって、家にお邪魔するなんて!!!

「ど、どうしよう……!?」

 慌ててクローゼットを開け、自分のお気に入りの洋服や、新しく買っては仕舞い込んでいた服を取り出す。そういえば、私服で会ったことがないんだ。おそ松くんの私服を見れるのは嬉しいけどやっぱり自分のを見せるのは恥ずかしいなあ。
 と、いうより。私おそ松くんの家わからないんだった。どうしよう。まずおそ松くんの家にたどり着くかどうか……。

梓音:おそ松くん
おそ松:ん?
梓音:私、おそ松くんの家わかんない
おそ松:あ
おそ松:悪い!迎えに行こうか?
梓音:住所教えてもらえればいける、と、思うんだけど……
おそ松:住所か!えっと

 
 教えてもらった住所をマップで検索する。なるほど、ここなんだ。なんて考えているとふと違和感を感じる。おそ松くんは私の家まで、ついでだからと送っていってくれていたから私の家よりも遠くにあるのかと思えば、駅から反対方向だった。わざわざ送ってくれていたんだ……。じんわりと胸が温かくなる。

 そんなこんなで時間はあっという間に過ぎて行き、11時になった。震える手で今からおそ松くんの家に向かうねとLINEを入れて家を出た。何度かマップを確認して数十分後にはおそ松くんの家に着いた。未だに震えが止まらない中、ピンポンとチャイムを押せばドタバタと走ってくる音が聞こえる。乱暴にあけられた扉からは赤いパーカーを着たおそ松くんが顔を覗かせていて。

「おかえり!!」

 なんて言うものだから、私はびっくりしながらも、笑ってただいまと声をかけた。


「お邪魔します」
「ごめん、兄弟追い出せなくてすげえうるさいと思うけど気にしないで」
「うん!」
 
 スパン!と開けられた扉からは5人の顔が見えて、それぞれのことをやっているけど一緒にはいるんだなとなんだか微笑ましくなった。

「あれ、おそ松兄さん?」
「何してんの、って、え……」
「おそ松兄さんが女の子連れてきた!!!」
「……あの子じゃないの」
「フッ、ついに兄貴にもHONEYが……」

「あー!もう!うるせえ!俺の彼女だから!梓音ちゃん!」

 梓音ちゃん、なんて呼ばれたの初めてでちょっと照れてしまう。おそ松くんを盗み見てみるとほんの少しだけ顔が赤い。再びスパン!と扉を閉めて「行こう」なんて言って手を握られる。……ああ、やっぱり恥ずかしい。


「ごめんな、馬鹿ばっかで」
「ううん、たのしいよ」

 どことなく、ぎこちない雰囲気が部屋を支配する。おそ松くん、と声をかけてみるとビクリと肩を揺らして「ど、どした?」なんて言うものだから体調でも悪いのかと思って「大丈夫?」と声をかけてみれば

「だ、大丈夫!」
「本当に?」
「う、うん、あのさ」
「??」
「ふ、服可愛すぎて直視できない」

 ……。
 私までフリーズしてしまって、お互いに喋れない空間ができてしまった。私もおそ松くんも目を合わすことすらできなくて、変な汗がだらりと流れる。

「おそ松兄さん、飲み物持ってきたんだけど」
「っ、トド松!ありがとう!!!」

 扉の外からトド松くんの声がかかって、おそ松くんは即座に反応をする。

「え……なにこの空気、どうしたの?」
「いやあ!ちょっとな!トド松も入れよ」
「は?いや僕がいたら空気読めない男じゃん」
「いいからいいから!」

 変な空気になっていたのが読み取れたトド松くんが言葉を発する。するとおそ松くんはこの空気を壊すためか、トド松くんを招きいれて座らせる。うん、私もありがたい。ごめんね、トド松くん。

「梓音ちゃん、かわいいね」
「へ」
「おそ松兄さんのために?」
「え、と、うん」
「そうなんだ〜!よかったね、おそ松兄さん」

 トド松くんの柔らかな雰囲気が少しだけ和ませてくれる。なんだか今日のおそ松くんは変に緊張していて私も落ち着かないんだ。

「で、なんでおそ松兄さんはそんな緊張してんの?」
「き、緊張なんかしてねえよ!」
「そんな震えた声で言っても意味ないよ」
「悪いトド松、ちょっと出てってくれない?」
「ん?オッケー」

 じゃあね、梓音ちゃん♪と可愛らしく告げて部屋から出ていってしまった。おそ松くんは一体どうしたんだろう、とか考えていると梓音と呼ばれた。

「はい」
「こんなの俺らしくないって自分でも思うんだけど」
「うん?」
「梓音が可愛すぎて手が出せそうにない」
「えっ」
「無理!何その格好!可愛すぎて死んじゃう!ダメダメ!汚したくない!」
「おそ松くん……?」
「いやだって家に呼んだらちょっとはそっちの展開期待するでしょ!?俺もしたよ!でも無理だわ!絶対無理!」

 そんな全力で否定されるとちょっと悲しくもなるけど、これって一応、褒められているんだよね……?

「褒められてる、よね?」
「褒めてる!うん!でもなんかちょっと下心も混ざってる!」
「ええ?!」
「ちょっとだけ手繋いでいい!?」

 顔を赤くして私に許可を求めるおそ松くん。さっきは無許可で繋いでたくせにこういうときだけ私に合意を求めてくるのがずるいところ。拒否なんて、するわけないのに。

「うん」

 おそるおそる、壊れ物を扱うかのように触れてくるおそ松くんに、つい笑いが漏れる。なんだか本当に今日は、”らしくない”日だ。

「おそ松くん今日はどうしたの?」
「え!?」
「緊張してるの?」

 してるよ!お、女の子家に呼んだことねえもん!
 なんて顔を真っ赤にしていうものだから私もつられて赤くなってしまう。何度目の赤面だろうか。

「……私が初めてなの?」
「そうだよ」
「うれしい!」
「な、なんで!?」

 だって、おそ松くん手慣れてるし……!ともらせばなんだよそれ!と拗ねたように口を尖らせる。

「私ね」
「うん?」
「いつものおそ松くんが大好きだよ」

 ……。
 瞬間、先程とは違った沈黙が訪れる。その沈黙は私たちにはかなり甘美すぎるもの。

「なあ、梓音」
「はい?」
「……」

 口を開いたその先は、

 思い出したくないです。

迷走、奔走、翻弄
(あなたのことが好きだから)
(空回りさえも愛おしい)

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -