大誤算 恋に落ちるなんて、思わなかった。
「ようこそ、ナマエちゃん。
いつ君がここまでくるのか楽しみにしていたよ。
君は……ポケモンと旅をして何を見てきた?
たくさんのトレーナーと出会って何を感じた?
君の中に芽生えた何か その全てを僕にぶつけてほしい!
さぁ、始めよう!!」
負けてもいい、なんて。初めて思ったことだった。この人には、チャンピオンでいて欲しいと。そう思ったのも初めてだった。
「チャンピオンである僕が負けるとはね……さすがだナマエちゃん!君は本当に素晴らしいポケモントレーナーだよ!」
負けてもなお、私を立たせ褒めることができるこの人に、胸が痛いほどに高鳴る。堪えないと涙が出そうだった。
「初めて会ったときにたしかに覚えた胸の高鳴り……」
天然で真面目だから、それはきっと恋なんかじゃない。……そう思っていても、甘く疼く心を騙しきれなくて。
「……私」
「ん……?」
「私っ、ダイゴさんが好きです……!」
ぎゅう、と手を握り。精一杯思いを伝える。……紅くたって、泣いてしまったって。もうなんでもいい。好きだという思いを伝えられればなんだって。
「……っ」
ふいに、キョトンとした顔。のち、すぐにその両頬が真っ赤に染まる。ぱっと手が離されたと思えば、ふわりと優しくしかし力強く抱き締められる。
「えっ、あの……ダイゴさんっ!?」
「ごめん、ごめんね。今は少し、このままで」
おずおずと背中に手を回し抱き締めてみる。ぴくりとダイゴさんが反応するが離れる気配はなさそうだ。……やばい、今すごい幸せ、かも。
「まさか、君から言われるとはね」
「え……?」
「……僕も、ナマエちゃんが好きだよ」
「えっ、うそ!?」
びっくりしすぎて、後ろに倒れそうになる。……が、ダイゴさんがスマートな身のこなしで支えてくれる。……今、好きって、……ええ!?
「うそ、うそだぁ……」
「泣かないで。……本当だよ」
「だって、そんな素振り一度、もっ……」
「……シャイなんだよ、僕は」
……お互いに吹き出し、もう一度抱き締められる。……またもスマートな身のこなしでキスをおとしてくる彼に、不器用ながらも私からキスをするのだった。
大 誤 算
(……アドバイス、しに行けない……)
(仕方ない、帰るか……)