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君を、守る
「うっ、うぇぇ…やだ、やだよ…いかないで…!」

……誰かが泣いている。
ベッドの横で泣き崩れている。小さくて悲しい背中。

しばらくして、泣き声は止まった。

「…じいちゃん、オレが守るから…っ」
「オレが、…ぐすっ…じいちゃんの、店を…守る、からっ…」

……ああ、そうか。
これは、あなただったの。

ふと、目が覚めた。
記憶に新しい生々しい夢だと思う。
……そんな小さく逞しい背中を、私は見覚えがある。

今はもう、小さくはないけど。
とても逞しく、……そして、遠い。
手を伸ばしても儚く消えて、届かない。

「っ、会いに、行かなきゃっ……!」

一刻も早く、と急り早まる思考を冷静になって見直し、
服を着替えて身なりと整える。
……今まで、作物や動物たちをここまで頭の中から消したことがあるだろうか。
身なりを整えると馬という手段を忘れたかのように、
私は駆け出す。……早く、早く彼のもとへと。



「っ……いたっ…!」

今日は土曜日。
偶然なのかわざとなのか定休日であってくれないが、
営業する日の方が起きている確率は高くなる。……と思う。

ちょうど彼はお店から出てくるようだった。

「っ…レーガ、さん…っ!!」

はぁ、はぁと息切れで掠れてしまった声だが、
彼は振り向いて一瞬面食らった顔をし、すぐに真剣な顔に戻った。

「……どうした?ナマエ、そんな息切らして」
「……泣かないで」
「は……?」
「もし泣いたなら、私が抱きしめるから…っ。だから、一人で泣かないで…っ」
「……っ…」

いてもたってもいられなくて、
ぎゅうっと抱き着いた。

「レーガさんが大切だからっ、一人で抱え込んで欲しくないっ…」
「……大丈夫。ナマエは優しいな」

ぽんぽんとあやすように頭を撫でてくれる。

「オレはもう、泣かないよ。この店と…ナマエが無事ならそれでいい」
「…わ、たし…?」

「……っ」

一瞬にして赤くなった顔を、隠すように。
そして、隠したままで彼はこうつぶやいた。

「オレだって、ナマエが泣いてるの見て平然とはいられない」
「……好き、なんだ。どうしようもなく。だからナマエが泣いて走ってきたとき」
「心臓が……止まるかと思った」

私、泣いて……たんだ。

「…ごめんなさい、夢を。見たんです」
「夢?」
「レーガさんが、一人で泣いている夢。……守ってあげなきゃって」
「……はは、そっか。サンキュ。…でももう、オレは子供じゃないぜ?」
「そ、ですよね……」

…。
……。
恥ずかしい。でも、今会わなきゃ彼が壊れてしまいそうで。
いてもたってもいられなかった、から。
……あ!!作物に水あげてない!動物もブラッシングしてない…!

「……それで、牧場の仕事は?」
「……放ってきちゃいました」
「っ、そ、そっか……。ありがとな、わざわざ。オレは大丈夫。大丈夫だから」
「……はい。絶対、絶対一人で泣かないでくださいね!!」
「ああ」

心配しながらも優しい笑みを浮かべてくれる彼を残し牧場へ向かう。



「……まいった。どさくさで告白してしまった…」
「にしても、よくもったもんだ、オレの理性」

顔を真っ赤にへたり込むレーガさんに気付かないまま。

君を、守る
(お互いにお互いを守って支えて、)
(そんな夢さえ、見てしまったんだ)

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