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縛って、愛して、
「縛っていい?」
「は?」

 目の前の彼女、ナマエちゃんは台本を読んでる俺の目の前に今、きて聞いてはいけないような言葉を発した。

「紐でも鎖でも鞭でもなんでもいいよ」
「ちょ、ちょっと待ってよ……?」
「縛って、一緒に閉じ込めちゃう」
「な、なに急に……!?」

 しかも、一緒に閉じ込めちゃうっていったい何と閉じ込める気なんだこの子は。貼りついたような笑顔を浮かべながら思考を張り巡らせる。……冗談言う子にはあんまり見えなかったんだけど。

「赤間くん、聞いてる?」
「う、うん。聞いてるけど……」

 サッと何重にもした柔らかそうなロープが彼女の手に現れる。い、今どこから出したんだよ……!?というマジレスは置いといて。さて、どうするこの状況。

「私ね、赤間くんが必要なの」
「え……っと?」
「なによりも大切だから」
「……なに、それ。告白?」
「うん。そうだよ」
「そんな真顔で言うものでもないよね!?」
「……感情を消さないと赤くなっちゃうから」
「赤くなった方がかわいいと思う的なの」

 と、告げるとプシュウウウウ…と音を立てそうなほど顔が赤くなる。徐々に膨らんでいく頬をつついてやりたくなってきた。

「そ、それより。縛ってもいい?」
「あー……」

 せっかく話題を逸らしたと思ったのに。逆に逸らされちゃったなぁ。……ほんと、どうしようこれ。

「ナマエちゃん?」
「はい」
「ちょっとしゃがんで」
「……こう?」
「うん。そうそう。いい子いい子」
「!……子供扱いは、しないで」

 ロープを握った手がカタカタと小刻みに震える。真っ赤な顔と少し膨らんだ頬がすごくかわいくて。やばい、今すごい抱きしめたい。

「ぎゅー、する?」
「……すr、……しない」
「えー?」

 ほれほれ、と腕を広げてニコニコ笑って見せる。……耐え切れなくなったのか周りを見てからおずおずとソファに膝をのせて、ぎゅ、と抱き着いてきた。

「ん、はいはいー」
「……赤間くん」
「なに?」

 てか華奢すぎじゃない?肩とか力入れたら折れちゃいそう。……なんて考えているとシュルリという音が聞こえる。

「(シュル、って……)」

 気付いたときには既に遅くて。ナマエちゃんは抱き着くふりをして俺にロープを巻きつける魂胆だったんだ!

「ちょ、ちょっと待ってよ……!」
「イヤ」
「そんなワガママ言ってないで!」

 といってるうちにどんどんとロープが体を侵食していく。何この子、縛るの上手すぎじゃない?Sっ気あるの。なんて悠長なこと考えている場合じゃなかった。

「できた!」
「うわー……」

 なんとも言えないこの状況。誰か部員が入ってきたら末代までネタにされるなあ。……一方、恍惚とした表情を浮かべて余ったロープの端を握っている。……なんか、ヤバイ。

「今は、赤間くんは私のもの……」
「…………」
「うれしい……」
「ねえ」
「?なんでしょう」
「”今だけ”君のものでいいの?」
「…………」
「…………」
「え?それってどういう……」
「”永久に”君のものでいられる方法がある的なの!」
「……??」

 鈍感か!と、心の中でツッコんでおく。なんか、本当に俺もヤバイ。気がしてきた。

「ナマエちゃんが、俺に好きって言ってくれれば、俺はずーっと君のもの」
「……好きです」
「え」
「大好きです。私のものになってください」
「……嬉しいね。むしろ俺のものになってよ?」
「もちろんです」
「即答!」

 なんだか、この状況も愛おしく思えてしまうんだから、毒されてるなぁと思う。

「というか、一緒に閉じ込めるってなにと?」
「……もちろん、私です」

「縛られてもいいや」

縛って、愛して、
(最初に縛っていいと聞かれたときから)
(嬉しいと思ってたなんて、言えないね)

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