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星に惹かれて
「好き」
「へ……?」
「私、オリオン座が好き」
「あっ、あ……星座、ですか」
「うん」

 お話、聞かせて?と問うと、もちろんなのです、と返ってくる。くそぅ、かわいい。撫でまわしたいぞ、このやろー。

「そうですね。悲しいお話なのですが……」
「ヤダ」
「えっ」
「そんなのヤダ」
「で、でも……」
「ふふっ、ウソ。話して?」
「っ、はい、なのです。……ギリシア神話のアルテミスという月の女神がいたのです。アルテミスはオリオンが大好きだったのです。ですが、アルテミスの双子の兄太陽神アポロンは乱暴者だと言ってオリオンを嫌っていたのです。仲のいい兄妹だったのですが、いつもそのことで喧嘩をしていたなのです。……あるとき、アポロンは海で泳いでいるオリオンを見つけたです。アポロンは弓の扱いが抜群だったアルテミスに「海に獣がいるから弓で射ってくれないかな」と海を指しました。そして遠目でわからなかったアルテミスはオリオンを射止めたのです。その後、自分がオリオンを殺してしまったという事実で悲しみに暮れ、夜を照らさなくなったのです。そして最高神ゼウスがアルテミスの照らす夜に通る天の道の近くにオリオンを上げ、オリオン座となったなのです」

「……悲しいお話ね」
「そう、ですね」
「でも、私は嫌いじゃないよ」
「奇遇ですね。ボクもなのです」

 嫌いじゃないというのは、本当。でも、本当に好きなのは星のお話をしてくれるアスヒくん。キラキラ輝いていて、見てて楽しいし、かわいい。

「……でも、本当に好きなのは」
「?」


「アスヒくん、だよ?」
「!え、っ、え…!?」

「……なんてね」

 赤くなるキミが見たくても、私も赤いから見れないのはちょっと残念だけど。毎日お話できるだけいいことにするんだ。


「(……アスヒくんがいなかったら私も、)」

 アルテミスのように、悲しみに暮れていたのだろうか。……アスヒくんは私がいなくなったら悲しんでくれるのだろうか。

「(でも実は、私神話は詳しいんだよ)」

 そんなこと、絶対に言わないけど。この時間がなくなってしまうのなんてイヤだから。

「……ナマエさん?」
「また、お話してね?」
「はい、もちろんなのです!」

 ふわりと優しく微笑むその姿はとてもかわいくて。この笑顔のために毎日私は彼に会いにくるのだ。


星に惹かれて
(本当に好きだって言ったら驚いてくれるかなー)
(うぅ、また好きだって言えなかったなのです)

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