紅茶に愛を溶かして ぽちゃんっ、と音を立てて紅茶に角砂糖を入れていく。そんな私を見て、三月ウサギさん、それに門番さんたちが驚愕しているのがわかる。
「……お、おいナマエ?」
「そ、そんなに入れちゃうの?」
「甘すぎると思うよ……?」
そしてそれを見ている我らがボス、ブラッド=デュプレは言わずもがな不機嫌である。彼はストレートの紅茶を愛す人だから。
「……好き、嫌い」
ぽちゃんっ、ぽちゃんっ。
再び角砂糖を入れていく。飲む気など毛頭なく、ただ無造作に砂糖と愛を投げ入れていくだけだ。
「……くるりくるくる、巡り巡って大好き」
ティースプーンでくるくると回して言葉を零す。吸い込まれていくように砂糖がなくなっていくのが嬉しかった。
「……お嬢さん」
「……ラヴ、フェイク」
「……ナマエ」
「なぁに、ブラッド」
「君は紅茶を冒涜しているのか」
「そんなことしてない」
「しているだろう」
ただ、私は――。
溢れんばかりの愛を、紅茶に溶かしているだけよ、と。
「……それが冒涜だろう?」
「愛くらい溶かしたっていいでしょう」
「紅茶が溢れそうになっている」
「……じゃあ、貴方が受け取ってくれる?」
「……考えようじゃないか」
「あら、紳士なのね。マフィアのボスさん」
どうせ、そんなの戯言のくせに、と。つんと顔を逸らす。
ガタリ。
彼が席を立ったのがわかる。……いいのよ、どうせ怒ったって私の愛を受け取ってくれやしないのだから。
「おいで、ナマエ」
でも、彼の声色があまりにも優しすぎて。
「……待ってよ」
私から折らざるを得なかったのよ。
*
「……どうかな、愛は治まったかな」
「全然ダメ。……もっとあげる」
「おやおや、困ったお嬢さんだ」
ふふ、と笑って首に手を回してキスをする。そこから先は秘密の花園。
紅茶に愛を溶かして
(こうすれば私の愛も貴方に届くって思っていたの)