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愛とか恋とか
「正義とか」
「……はぁ?」

 いつもの学校の帰り道。トラくんと一緒に談話しながら帰っていたとき、ふいに、口からそう零れた。

「トラくんって一見不良だけど、実は正義感強いですよね」
「んなわけねぇだろ、何言ってんだ」
「だって、私を守ってくれたじゃないですk…」
「だぁぁっ!っるせぇ!知らねえよ!」

 顔を赤くしてそっぽを向くトラくん。ふふ、やっぱりトラくんはトラくんだ。優しい。

「ねぇ、トラくん」
「……んだよ」
「私、この時間がずっと続けばいいな、って思う」
「……なんだ、急に」
「この時間がとても幸せで、大切だから」

 ……そう思うのに、なぜか壊れてしまいそうで、不安になる。手のひらから滑り落ちていく砂のように、脆くて危うい。

「お前がそれを望んでんなら、叶うんじゃねえの」
「……そう、かな」
「叶わねーときは俺が叶えてやるよ」
「え、それって……」

ずっと、一緒にいてくれる。ということだろうか。ほんのり胸に温かいものが落ちる。……頬も熱い。

「……赤くなってんなよ」
「私も、トラくんの願いを叶えたい」
「俺の?」
「うん。トラくんの」

 ふ、とトラくんは立ち止まって、こちらをじっと見ていた。

「……どうか、したの?」
「俺、は」
「…………?」

 一歩踏み出して、小さくぽそぽそと何かを呟いている。顔が上がると思うと、ニヤリと笑って。


「……お前が欲しい」

 そう、耳元で呟いた。


「………反則、だよ。トラくん……」

 トラくんは、喧嘩っ早いし短気。でも、正義感は人一倍強くて、義理人情もある。そんなトラくんには、愛だの恋だの通じないと思っていたのだけれど。案外トラくん、疎くもないみたいです。

「……私を奪ってください」

と囁き返せば、もう。


 離せない、離すわけがない。

愛とか恋とか
(まだまだ無知な私たちだけど)
(二人で知って行けば問題ないよね?)

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