硝子の棺で眠る「クイーン」 チクタク、と規則正しく響く懐中時計の音。愛しい姫君は硝子の棺の中で目覚めることのない眠りについている。ただそれを眺め、愛おしく思うだけ。
「……ああ、ナマエくん。どうして、君は」
どうして君は、眠ったままなのか。……わかっている、そこを履き違えたつもりはないし、つもりも毛頭ない。ただボクは、キミを純粋に愛しただけの彼に「怒り」を知って欲しかっただけだった。
「……こうするつもりなんて、なかったのになー」
自嘲気味に呟いてみても、キミが今、目を醒ます気配など、あるわけもない。だからボクは、彼が成功することを祈るだけ。そして、何も関係のない12歳の世界の彼女に。こんな状態にしてしまった22歳の彼女に、できることならば今、目覚めて欲しいと、そう祈るだけ。
「知ってますー?懐中時計って、数日巻かないと止まってしまうんですよー。
……なのにこれ、巻いてもないはずなのに。動いてるんです。
……どうしてでしょうね。キミにもこういうキセキが起こるんじゃないかって。
神頼りなんて、ボクらしくもないのになあ。
……だから、ねえ。……目を醒ましてください。待ってますから」
愛おしい眠り姫が眠る硝子の棺にそっと口付けを落とすと。棺の彼女が涙を流した。ように見えた。
……でも、どうしたってそれはボクの気のせいで。キミが今、目を醒ますなんてあり得るわけがない。
”……キミのいない世界なんて、いらない”
”こんな世界に、なんの意味もない”
”もし、【カミサマ】というものが存在して”
”そいつがキミとボクを引き裂いたのなら”
”今度は、ボクが引き裂く番だ”
”―――――…この、理不尽な世界を”
この言葉は、キングが呟いていた言葉。皮肉にも、ボクも同じような言葉を知っていて、同じように呟いたことがある。
常々、ボクとキングは同類であるらしい。
「クイーン……いや、かごの鳥のお姫様。
キングが、待ちくたびれてるんです。
……できるなら、今すぐに。めを、さまして」
すぐにきっと、キミは目を醒ますだろう。
ボクはそう、確信していた。
――……だから、それまで。ゆっくり、おやすみ。
「Good Night,My PRINCESS.」
硝子の棺で眠る「クイーン」
(過ちを犯して悔やむルークと)
(まだ気付かずに眠るクイーン)