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恋人がドMなんですが、

怒らせるためには何をすればいいですか?


「……で、兄である俺に相談しにきたわけ?」
「うん」
「いやいやいや、俺ドMじゃないから!一松のこととか全然わかんないから!」
「でも、兄弟でしょ?」
「六つ子だから!同い年だし!」
「……そうだよね、ごめん」

 おそ松くんでわからないことが、私にわかるわけがない。なんて落ち込んでいると「あー!うん!アドバイスくらいならしてやるよ!」と言われた。

「……本当?」
「ほんと」
「ありがとう!!」

 んじゃ、とりあえずさ。


■ 「一松なんて大嫌い」って言ってみ?

 なるほど!傷つけるような言葉を言えば怒りだしてくれるかもしれない。さっそく私はおそ松くんのアドバイスを参考にすることにした。

「一松くん」
「……?」
「私、一松くんのこと大嫌い」
「え」
「……」
「え、なに、いってんの」

 ふるふると震えだす一松くん。泣きだしそうな雰囲気を出す一松くんに、あ、なんかこれは申し訳ないかもしれない……と思っていると、ふっと顔をあげた

「もっと」
「へ!?」
「もっと罵って」

 顔を紅潮させて言い寄るのはやめてください!!!!!


■ 思い切って足蹴にしてみれば?

 大嫌い、と言ったところ私が彼を喜ばせる手段だと思ったのか、それともただ単にドMの宿命なのか、頬を赤らめて喜んだ彼。終いにはもっと、と強請ってくる始末だった。なので素直に諦めておそ松くんへ連絡してみた。

「足蹴に……?」

 ひどい扱いとは一体どうすればいいのか、おそ松くんに聞いてみると「んー一松が話しかけてきたら『うるさい!』とか言ったりそれにビンタ加えてみたり」とかえってきた。
 それはさすがの一松くんでも怒るだろう!

「……ねえ、名前」
「う、うるさいな」
「え?」
「な、なんの用!?」
「いや、これ」
「いらない!!!」

 ぱしんっと伸ばされた手を叩く。驚いたように目を見開いたのち、思案するかのような表情を見せて、「はぁ……」とため息を漏らした。さすがに怒ったかな?と思えば、

「いいね……つんつんした感じも」

 はぁ、というのは興奮した合図だったらしい。またまた頬を紅潮させてこちらに言い寄ってくる一松くんに「こないでーーーーー!!!」と叫んだ。


■ 「じゃあ、鬱陶しがるくらいに甘えてみれば?」

 「むしろ甘えるというよりはパシリに使う、みたいな」と三回目のアドバイス。そうくるか!私にも気恥ずかしさが残るが、仕方のないこと!手段は選んでいられない。

「いちまつくーん」
「……?なに、甘えただね」
「んふー、今日はくっついてたい気分」
「そう」
「……にゃあ」
「え」
「猫じゃなくて私を可愛がってよー」

 さすがにこれは怒らないか、なんて思って何を言うか考えていたところ、肩を掴まれて押し倒された。あれ?あれれ?

「……可愛がってあげる」

 ぺろり。舌なめずりをしたかと思えば私の首筋に吸い付いてきて、ってそのあとのお話はやめてください!いやーーー!!!!


■ 「じゃあもう一松に聞いてみれば?」

 怒ることがわからないなら、どうすれば怒るのか聞いてしまえ、となんとも本末転倒なことを言われた。本人に聞いてしまうのはなんとも忍びないので十四松くんやトド松くんに聞いてみようと松野宅を訪ねる。

「はいはーい!あ!名前ちゃん!いらっしゃい!!」
「十四松くん、こんにちは」
「こんにちはー!!!今日、一松兄さん猫と遊んでるよ???」
「うん、いいの。トド松くんっている?」
「呼んだー?」
「いるよ!!!トッティも!!!」
「……十四松兄さん、トッティはやめてよ」
「ちょっと質問があるの」

 質問?と同じタイミングでこてんと首を傾げる二人に、私はくすりと笑いを浮かべて「一松くんってどうすれば怒るのかな」と聞いてみた。

「え!名前ちゃんは一松兄さんに怒られたいの!?」
「うーん?」
「え、まさか名前ちゃんドエm」
「違うよ」
「だよね。一松兄さんかぁ、僕らにもあんまり怒らないんだよね」
「そうだね!!チョロ松兄さんがよく怒るけど、一松兄さんに怒られることってすくないね!!!」
「そっかあ」

 やっぱりこの二人も知らないのかあ、と思っていればがたんと家の扉が開く音。リビングに入ってきたのは一松くんだった。

「……何してるの」

 あれ、目が怖いですよ、一松くん、

■ 「もうアドバイスいらないよね?実感したよね?」

 ニヤニヤと打っている姿が想像できるようなメールが届いた。ああ、はいそうですね。怒られましたよ。なんとも単純だ、十四松くん、トド松くんと三人で楽しそうに話しているところを見て「浮気でもするつもり?」と怒ってきた。

「……一松くん」
「なに」
「大好き」
「っは」

 素直にそう言ってみれば、照れたようにそっぽを向いて猫を触り始める一松くん。どうにもこうにも、私は松野一松という男の子が大好きらしい。


恋人がドMなんですが、 - 151229


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