数日ぶりに出た外は、嫌がらせかと思うほどによく晴れていた。太陽から降り注ぐ眩しいくらいの光に阿近は目を細める。強すぎる光は目に痛い。
一息付くと、白衣のポケットからタバコを取り出し一つ深く煙を吸い込んだ。すぅっと細く口から吐き出された煙はゆったりと天へと昇っていく。

「相変わらず大変そうだねぇ」

ふと、上から降り掛かった声。気の抜けるような、それでいて男らしいその声は、八番隊隊長、京楽春水のものだった。

「また逃げてきたんですか?」
「いやぁ、休憩だよ。七緒ちゃんには内緒にしてね?」
「ほどほどにしてあげないと可哀想っすよ」
「うーん、でも籠もって仕事するのって僕の性に合わないんだよねぇ」

顔の上に載せていた笠を持ち上げ、苦笑混じりに言った京楽に対して、阿近はしょうがない人だと煙を吐き出す。

「ねぇ、阿近くん。こっちにおいでよ。気持ちいいよ」

屋根の上から顔を出して阿近に手を差し出す。
吸い納め、と深く煙を体内に巡らせる。煙草を潰し火を消して捨てるとそのまま差し出された手を掴んだ。
ぐんっと力がこめられ、屋根の上へと引き上げられる。

「阿近くん、また軽くなったね?」
腹に手を回され、背中に覆いかぶさるように抱き締められ、体のあちこちを確かめるように撫でられた。

「ちょっと、離してくださいよ。擽ったいです」
「だって阿近くん、君細過ぎるよ?もしかして浮竹より細いんじゃない?」

ちゃんとご飯食べないと駄目だよ。どうせまた仕事を理由にしてるんでしょ。
心配そうな声色の中に、親のような厳しさを含めて、京楽は阿近の頭を撫でながら言う。

「そんなことないです」
「そんなことあるよ。ほら、顔色も少し悪いんじゃないの?」
「顔色悪いのはもともとですけど」
「いつもよりってことだよ。前に会った時より……あまり無理しちゃダメだよ、悲しくなっちゃうじゃない。ね」

京楽を見上げてみると、もともと下がり気味の眉をさらに下げて阿近を見つめていた。
その視線がどうにも擽ったく、阿近は誤魔化すように視線を空へと移した。
暫くの沈黙が続く。鳥の鳴き声と、遠くから聞こえる隊士たちの声が二人の空間を包んでいた。心地よいその沈黙と背中の温かさに阿近の瞼が重くなる。徹夜続きの体は疲れきっていた。

「眠いの?」
「……ちょっと」
「寝てもいいよ」
「…いや、でも…まだ仕事があるんで……」
「阿近くん働きすぎだよ?少しくらい休まないと、逆に効率悪くなるんじゃない?」

京楽の言い分にそれもそうかと、阿近は体を少し横に変え、肩と腕に頭が乗るように体勢を変えた。胎児のような形で腕にすっぽりと収まった阿近は、落ち着くのかすぐにうとうとと意識を夢に預け始めた。

「おやすみ」

ふらふらと闇に沈む意識の中、京楽の優しげな声が阿近を包んだ。
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