光に咲く花


ぼうっと朧げに霞んでいる月。
深い紺色の空にのまれていても、確かに存在を主張にている、金色の月…――――



烝が任務から帰ってきて3日が経った。
稔麿に抱かれた事は、まだ土方には知られていない。
結局抱かれるだけ抱かれて、欲しい情報も手に入れられず逃げ帰ってきた。
ろくな抵抗も出来ずに汚された身体。
忍なら覚悟していなければいけなかった。
それでも想い人に優しく、激しく抱かれることに慣れてしまった身体は、全てが闇色に塗り潰されたように……
洗っても洗っても、消えていかない闇色の汚れ。

自分の部屋の縁側に座り、闇にのまれそうな月を見上げる。
土方にこんな汚い身体を触れさせるわけにはいかない…
烝はぎゅっと自分を抱き締めるように身を縮こませ、冷たい夜風に浸っていた。

「山崎くん、ちょっといいか?」
「っはい!」

不覚だった。土方は別に気配を消していたわけでは無かったのだが、烝は気付けなかった。
それほど自分の思考の中に入り込んでいた。



縁側から土方の部屋へと移動し、向かい合うように座らせる。
土方は烝を一瞥して、声を掛けた。

「この前の任務で何かあったのか?」

問いかけられた烝に一瞬動揺が奔る。
任務から帰ってきてから、烝の様子が気になっていた。
烝から話してはくれないだろうと土方は自室に連れてきたのだ。
副長命令で聞き出せば、忠誠心の塊である烝は話してくれるだろう。
だが土方は副長としてではなく、烝の恋人として話してほしかった。

「山崎君、これは副長命令ではないんだ。無理には話さなくてもいい。」

でもな、山崎君。と土方は続ける。愛しいものを見る目で烝を見つめながら。

「何があっても、俺は山崎君のことが好きだぜ?」

顔をあげた烝の目に映るのは、優しい微笑みを向ける土方で、その言葉にどれだけの愛しい気持ちが詰められているのかが分かって、烝は泣きそうなりながらあの日、任務で起こった事をゆっくりを話し始めた。
途中言葉に詰まりながらも必死に話そうとしている烝を土方は抱きしめ、烝を無理やり犯した稔麿に嫌悪感と憎しみと復讐を心の奥底に燻らせていた。



  END


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