嘘つきの愛


あいつは嘘≠サのものだった。

もうすぐ空は白み、朝日が顔を出す頃、布団の中で二人の体温でぬくぬくと温まった熱を分け合う。

「愛しとるで、阿近」

ギンの細く、けれども男らしい刀を振るうための筋肉が綺麗についた腕に頭を預け、その言葉を聞いた。
何も言わずに黙っていると、不満そうな顔をしたかと思うと、またにやにやとした狐のような笑みを浮かべた。

「おれも愛してるーとか返してくれへんの?いけずやなぁ」

阿近の額にかかった少し痛んだ黒髪を空いている方の手で払う。
それを拒むように、阿近はギンの胸に顔を埋めた。

「ん?なんや、眠いん?」
「あぁ……ちょっと……」
「ほな、少し寝むろか」

ぽんぽんっと頭を数回撫でられる。
その仕草が優しくて、つい勘違いしそうになった。

阿近と市丸ギンは、付き合っているわけではない。所謂、身体だけの関係、恋人ごっこというのが近いかもしれない。
お互いに本命がいるのだ。
その本命との今の関係を壊せない臆病な二人は同じ傷を持つ相手と気持ちを逸らすことにした。
その関係を終わりにする事も出来ず、ここまでずるずると来てしまった。
いつも丁寧に優しく触れてくるギンに、阿近は身体を重ねる度にだんだんと惹かれていた。
手荒に扱うのではなく、本当の恋人のように優しく、本当に愛してくれているかのように囁いてくれる。それが阿近には嬉しくも辛かった。
ギンの囁く「愛している」は自分に囁かれたものではない。
自分は所詮、身代りだ。

ギンの寝息を聞きながら、胸に顔を埋めたまま、聞こえないように呟いた。

「……愛してる」

お願い。
聞こえないで、伝わらないで
ただ想っているだけでいい……。
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