オフの前日。久しぶりに堺からお誘いがあった。
家で飯を食べさせてもらうことは多いが今回は珍しく堺がお酒を飲んでいる。
ノンアルコールじゃない、それなりに酔えるビールやらカクテルやらチューハイやら…
いつもの堺じゃ考えられないな…。
来た時には綺麗に整頓されていた部屋が、缶やつまみのカスで散らかっている。
いつも汚すと起こるくせに。

「ちょっと堺、飲みすぎじゃねぇ?」

大丈夫かー?と声をかけるが唸るだけで、酒を飲むのをやめようとしない。

「そんなに彼女にフラれたのがショックだったわけ?」
「…うるせぇ」

いつもは振られてもケロッとしているくせに、今回はそんなに本気だったのかよ…

「サッカーやってる俺が好きだとか言ってたくせに…『サッカーと私どっちが大事』だなんて今時ドラマでも言わねぇ事言いやがって…」

サッカー選手なんだから仕方ないだろ…
そうテーブルに突っ伏したまま、ボソボソと愚痴を零す。
そうだよな…。きっとチーム内で堺ほどサッカーの為に体をケアしてる奴いないだろう。
自分で栄養管理もしているし…
だから、そんな堺を解ってやれないその女にムカついた。
そんな女より……――――

「俺にしとけばいいのに。」
「…は?」

しまった。心の声が漏れた。
でも言ってしまったものはしょうがない。

「俺にしときなよ、堺。」

俺は同じサッカー選手だから、どっちが大事だなんて言わないよ?大事にするよ、お前の事…

「なーんてな!冗談「…そうだな。」…え?」

ちょっとした沈黙にも気まずくなって、冗談だと、はははっと笑おうとしたら被った声。

「……お前と付き合うの…」

そう言う堺の顔は見えない。
本気なのか、冗談なのか…
酔っているから、弱っているから、言ってしまっただけなのか…

「それ、本気で言ってんのか?」

俺は本気だよ。堺の事が好きだ。

「……あぁ…。」
「俺はお前を抱くよ。そういう意味で好きだって言ってんだ。」

はっきりと、堺に顔を上げさせて、堺をじっと見つめながら言う。
「……べ、別に…嫌じゃねぇ…し……っ!!」

顔を真っ赤にした堺は視線を彷徨わせながら、蚊の鳴くような小さな声で言った。
それを聞いたとたん、心の奥底から溢れだす愛しい気持ちを発散させるが如く抱き締める。

「何、何なのお前!可愛過ぎるだろっ!!」
「なっ、可愛くねぇ!!!」

目ェ可笑しいんじゃねぇのか?!
そう怒鳴りながらも手は俺のシャツを掴んでいて、さらに堺への愛しさがました。
皺が寄っている眉間に、チュッとキスをすると、堺に背中を殴られた。それでも軽くで、本気で嫌がっていない事がわかる。

「あ〜…もう。堺ホント好き。」

大好きだ………

今腕の中にある、ずっと望んでいた幸せを離さない為に腕の力を強めた。



END



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