「……っ…!」
堺さんは、基本声を出さない。
イクときだけかすかに声が漏れるけど、基本ずっと抑えてる。
「…堺、さん……」
女の子とは違って硬い身体、日に焼けた肌。
でも。筋肉が綺麗についたあの脚だけは…女の子よりも魅力的だと思った。
ヤッた次の日の朝は、いつも先に堺さんが起きて、風呂入って、飯作ってくれて、その頃俺が起きだす。
それから、堺さんが先に出てって、練習に行く…。
俺と堺さんの間には、恋人なんて甘い絆があるわけじゃない。
お互いに性欲処理として身体を繋げているだけ。
俺も、どうせ付き合うならふわっと可愛い女の子がいい。
そう考えるのは普通だろ?
――――――――――――――――――――――
最近、堺さんと身体を繋げていない。
というか、あれからヤッていない。
堺さん家に行っても、ご飯作ってもらって、寝るだけ。
ただただ普通に。そういう雰囲気にもならない。
…どうしてだろう?
「さーかいくん!昨晩はごめんねー」
「あぁ、いや、俺も悪かったな。」
「いやいや、いいよ。ずいぶんと情熱的な堺君が見れたからね」
「…っ」
…は?情熱的な堺さん…?
ってかいうか、なんで堺さんそこで赤くなるの?!
…まさか、俺じゃなくてガミさんと?
…あれ、なんだろ?
なんか、スゲー嫌だ。
堺さんは俺のなのに…って…
別に付き合ってねーのに。
ただのセフレなんだから、堺さんが俺以外の誰と寝ようが関係ないはずなのに…
どうしたんだろ、俺…
なんか、これじゃ…
俺が堺さんのこと好きみたいじゃん…
*
『ずいぶんと情熱的な堺君が見れたからね』
家に帰ってからもガミさんのあの言葉か頭の中をぐるぐると回っている。
堺さんのあの反応も…
「……堺さん…可愛かったな…」
…はっ!何言ってんだ俺ぇぇ!!
なんかマジで俺が堺さんのこと好きみたいじゃんっ!!
「うわぁぁぁぁぁ…堺さんが知ったら絶対怒るっ!!」
『はぁ?…呆れた。なに好きになってんだよ。そういうのなしでの身体の関係だろ!!』
…簡単に想像出来ちまう……。
「マジどうしようっ、明日堺さん来るのに…大丈夫かな…」
―――――――――――
「…お前、今日変だな。まぁ、いつもだけど。」
「へぇ!?…ん?え、いつもッスか?!」
好きだって気づいてから、つい堺さんのこと目で追ってて、それに気づいて恥ずかしくなって目をそらす。
それに堺さんが隣に座ってると思うとついそわそわしちゃって、それがよけい不審に思われたらしい。
「…世良、ヤるぞ。」
「ふぇ!?」
いきなりの堺さんからのお誘いに変な声をあげてしまった…
嫌か?と見てくる堺さんがたまらなく可愛く見えて…
でもこんな気持ちのまま押し倒したら、とんでもない事をヤってしまいそうで怖くなった。
「……出来ないっす…。」
「あ?なんでだよ。」
「ぉ、俺!堺さんのことが好きなんス!!」
だからこんな半端な気持ちで堺さんを抱けません!
そう勢いのまま言って、堺さんの顔をじっと見つめる。
「なっ、なんだよそれっ!!!」
呆れらせるか馬鹿にされるかと思ったら、目の前の堺さんは顔を赤くしていて。
一瞬怒ってんのかと思ったけど、すぐ違うと気づいて抱きしめたくなったけど我慢した。
ちゃんと堺さんの気持ち聞いてから抱き締めたかったから。
「堺さんは…?堺さんは、俺のこと好き?」
「………嫌いだったら…抱かせるわけねぇだろ…っ!分かれよ!だからお前は馬鹿なんだ!馬鹿っ!!」
早口で怒鳴った堺さんは恥ずかしさでか少し涙目で、すげぇ可愛くて「堺さん可愛いっス!!」って言ったら殴られた。
後日、堺さんが最初から俺のことを好きだったことが判明し、ガミさんが言っていた『情熱的な堺君』とは久しぶりに酔った堺さんが俺のことについて語っていたことだったらしい。
それをガミさんに聞きに行った時、すげぇニヤニヤされて少しぶん殴ってやろうかと思った。
END