2011クリスマスフリー
髪の芯から凍えるような寒さの中、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトは屋敷の窓を開け、空を見上げていた。
厚い雲が掛かった濃紺の空にケイネスが吐き出した白い息が昇っていく。
「主、そろそろ冷えますので……」
「……あぁ」
今日はクリスマスだ。
アーチボルト家でのパーティーはイヴに終え、今日はソラウと2人でとっておきのワインを空けるつもりだったのだ。
ソラウは実家に帰ってしまうし……
ハァ…とケイネスは落胆の溜息を吐く。
暖炉の火がパチパチと爆ぜる音を聴きながら、一人掛けのソファーへ座ったケイネスはソラウと空けるはずだったワインをグラスに注ぎ煽った。
一番気に入らない事といったら、ランサーが居ることだ。
ソラウは最初ランサーも連れていこうとしていたが、ランサー自身が「主の側に居るのがサーヴァントである私の役目ですから」と断ったのだ。
「主、ワインだけでは物足りないでしょう…?クラッカーなど如何ですか?」
クラッカーにチーズ&プチトマト、ジャムなど、数種類の美味しそうなクラッカーが白い皿に並べられている。
「はい、主、どうぞ!!」
満面の笑みのランサーの手には、1つのクラッカー。
「……ランサー…これは何だ。」
ケイネスは頬が引きつるのを感じた。
何をやっているんだ、このサーヴァントは。
「何って…あーん、ですが…お気に召しませんか?」
「貴様は私を馬鹿にしてるのか」
「馬鹿にだなんて!!ただ私は主の手が汚れるのではないかと……」
しょんぼりと肩を落とす姿は、まるで主人に叱られた犬のようだった。
ふぅ、と1つ溜息を吐く。ランサーはそろりと不安げにケイネスを見上げた。
その視線を無視し、ケイネスはランサーの手首を掴み、ぐっと引き寄せた。
ランサーの持っていたクラッカーをそっと口に含む。
「あ、主……」
「うるさいっ貴様が言ったんだろう!」
掴んでいた手首をパッと離して、ケイネスは羞恥からか、顔を赤らめ、半ばやけくそに叫んだ。
(可愛らしい……)
いつもは威厳の具現した様なケイネスが羞恥に顔を歪める姿はとても愛らしく、思わず頬が緩む。
「何を、笑っている」
「いいえ、何でも……主、もう1つ、如何ですか?」
貴方が望んだ
甘さではないけれど
暖かな部屋で………
Merry X'mas
フリー期間
2011.12.05〜12.26
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