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しんぞうがいたいよ

「俺さ、何がダメだったんだろう」

風丸が小さく零したその言葉に私は答えることは出来なかった。

「俺は好きだったんだよ」

うん、知ってる。

「俺なりに歩み寄ったつもりだった」

知ってるよ、聞いていたもの。

「あの子の好きなアーティストも、たくさん聞いたんだ。好きな俳優のことも、色々と調べたんだ。」

「うん」

「あの子との時間を俺は大切にしていた」

愛おしそうにあの子のことを語る君を私は見てたよ。

風丸の目には涙が浮かんでいた。涙声になっていることも気にせずに風丸は続けた。

「言われたんだ」

「なん、て?」

「『重い』ってさ」

もう完全に風丸は泣いていた。でも私も同時に泣き出したかった。

「『付き合ってあげてる』とまで言われたんだ」

風丸に掛けられる言葉がなかった。いや、掛けたい言葉はあった。

もうそんな子の話はやめようよ。

悲しむべきは振られた側じゃなくて自分を愛してくれる人を失った振った側だって聞いたことがあるよ。

あの子はそうかもしれないけど、私は風丸のこと好きだよ。

…好きなの。

なんて、どれもこれも風丸の求める言葉じゃないのだ。私が今そんなことを言ったって、彼には届かないのはわかっている。

「何がダメだったんだろう」

「なにもだめじゃないよ」

繰り返す風丸に返した言葉は震えていて、私ももう涙声だった。

「風丸は、優しいし、いつも一生懸命で、努力家で、私が困ってる時にいつも仕方ないなって言って助けてくれるし、わたしに、わたしにとって風丸は何も何もダメじゃない、たいせつなひとだよ」

限界だった。風丸は何もダメなんかじゃない。そんなあんな何もわかってない子にそんな風に言われて悲しまないでよ。感情が溢れて涙が止まらなくて。嗚咽混じりに出した言葉は半分も聞き取れなかったかもしれない。それでもどうしても。風丸に伝えたかった。

「ありがとう、名前」

そう言って風丸は私の頭を撫でてくれた。
けど、私が心の底からこう言っても、あの子の心無い適当な一言には勝てないの。私はこんなにも風丸の近くにいて、あの子よりもずっとずっと風丸のことを好きなのに。そのことが辛くて悲しくて、涙なんて到底止まらなかった。


私がこんなに想っても、風丸の心はあの子に留まったままなの。




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