夏と言えば? そう問われればわたしは間違いなく夏祭りだと答えるだろう。 ヒビキやコトネはシルバーも巻き込んでわたしを嵌めたらしい…いや、わたし達を、だ。 彼らと夏祭りに行こうと誘われたわたしの隣にいるグリーンも嵌められたようだ、「あいつら…」とため息をつくと同時に呟いた。 彼に想いを寄せている身としてはありがとう、なんて思ったり…。 けれど、自分の着ている深緑ベースで控えめな花柄の浴衣を見てため息。 こうなるのならもう少し可愛らしい色の浴衣を着て来ればよかった。 「…とりあえず、行くか」 「うっ、うん!」 歩き出したグリーンを追いかける様にわたしも歩を進める。 しかし人が当たり前に大勢いるこの場所、すいすいと前に進んでいくグリーンとは対称的に、わたしはそれに苦戦して中々進むことができなかった。 距離が1m、2mと離れていく。 焦る気持ちを他所に人は次々と増えて行き、遂に諦めて足を止めた。 グリーンの姿は、見えない。 ふと視界に入った水風船の屋台に足を向ける。 小さい頃よくやったな、なんて考えながらお兄さんにお金を渡す。 「あれ、君一人?」 「いや…ちょっと逸れちゃって…、あっ!」 「ふ、君下手だね。教えてあげようか?」 取れたと思った水風船は、紙の糸が切れてもといた水に戻って行ってしまった。 まさか水風船も取れないなんて…。 お兄さんも珍しい物を見たらしく、驚いた顔をするもすぐ笑顔を見せてわたしの隣に腰を下ろした。 「君、可愛いね、名前は?」 「えっと、…ナマエです」 「ナマエちゃんね、もうすぐ休憩だから一緒に回らない?」 コトネがセットしてくれた頭を優しく撫でられる、親しくない人にそうされて少し戸惑って何も答えられなかった。 髪の毛はコトネが気合い入れてしてくれてセットしてくれたけれど…今思えばグリーンと二人にしてくれる為だったのかと頭の隅でぼんやりと考えた。 ねえ、と耳元で聞こえてそっちを見るとお兄さんのドアップが。 わたしは慌てて後ろに反るけれど、動きにくい着物に足をとられてバランスを崩す。 「う、わ…っ!?」 「危な…っ」 「…まったく、相変わらず危なっかしいな」 「グリーン!」 わたしの背中を支えたのは逸れたはずのグリーンだった。 右手に持っていた、さっきお兄さんに渡された水風船を取る道具をグリーンに奪われる。 わたしの背中を左手だけで支えて、右手で華麗に緑色の水風船を取った。 その後すぐわたしを立たせて、そのままさぞ当たり前の様に肩を抱いた。 「…えっ!?」 「悪いな、俺の『彼女』が世話かけて」 「…ちっ」 「………は、ちょ、グリーン!?」 「ほら行くぞ」 水風船を持たされて肩を抱かれたまま、わたし達はその場を離れた。 水風船の輪ゴムを、ぎゅっと握る。 顔と触れている肩が、熱い。 引き寄せられた 101028 |