結局、俺はあいつが羨ましかったのかもしれない。 盗んだポケモンでバトルを挑み、負けてから、俺はポケモンを強くすることに専念した。 そして偶に出会うあいつに何度もバトルを挑む。 それでも勝てなかった。 俺は悔しくて、気に入らなくて、あいつに言った。 「俺は最強のポケモンを揃えた!なのに何故お前に勝てない!?」 怒鳴ったと言う方が正しいか。 拳を震わせてあいつを睨む。 何故だ何故だ何故だ! あいつには在って俺に無いものは何だ! するとあいつは俺に近付いてこう言った。 「知らないわよ。ああ、愛じゃない?」 愛だと?ふざけるな! 馬鹿にされたようで、俺の苛立ちを膨らませた。 はあはあと息が荒くなる。 目の前のあいつは眉を潜めた。 「ふざけてんのはあんたでしょう。ポケモンを何だと思ってんの?ていうか何様?」 「な…っ!ポケモンは道具に過ぎないだろう!それに愛がどうとか…!」 「結局、あんたはロケット団と同じね」 かああっと頭に血が上るのを感じた。 気が付けば、あいつの胸元を掴んでいた。 それなのにあいつは顔色一つ変えず、俺の手を振り払う。 ちゃんと考えなさい、そう言って立ち去るあいつの背中を俺は睨み続けた。 もうあいつに負けない。 そう誓いを立ててポケモンをひたすら強くした。 あいつの言ったことの答えは出ない。 しかし俺はこんなことで立ち止まる訳にはいかないんだ。 最強になって奴を倒すまでは…! そうしてあいつに会ったのは、四天王に挑戦しようとしている時だった。 俺は変わった、そう告げて始まるバトル。 「…撤回する」 「……何をだ」 「前、ロケット団と同じって言ったこと。あと…ごめん」 「………」 「あんたは成長したと思うよ。バトル楽しかった、またしようね」 また、負けてしまった。 だが今までみたいに腹が立つことはなかった。 寧ろ清々しい。 成長、したのだろうか、俺は。 自分ではわからないが、あいつが言うんだ、少しはしたのかもしれない。 ……またバトルしようと言われたことに心臓が跳ねたのは知らん。 今度はいつナマエに会えるのだろうか。 次こそ、俺は、 お前に勝つ (ふと何年かぶりの笑みを浮かべた) 090904 HGSS発売8日前記念! |