あたしさ、と拗ねた声で話し始める。 隣に座るレイジさんは既に苦笑い。 え、まだ話してないんですけど! 「シンジに嫌われてるんですかね」 「そうかな?あいつはナマエちゃんのこと結構気に入ってるみたいだぞ?」 はあ?と素っ頓狂な声が出た。 眉間にしわが寄っているのが自分でもわかる。 あの仏頂面で毎回温いと言われるのだ。 その態度を見て何故そう思うのかわからない。 「あれ?」 「あ、珍しいな…」 ガルーラの赤ちゃんがよちよちと歩いて来て、あたしの足にすがりつく。 ひょいと抱き上げて膝の上に乗せてやると、両手をバタバタと振って喜んだ。 レイジさん曰わく、この子はなかなか人に懐かないのだそうだ。 オレでも手懐けるのに時間かかったのに、とボヤいた。 ふーんと言いながらあたしはその子の頭をよしよしと撫でた。 「なんか…、こうしてると夫婦みたいだね、オレ達」 「あはは、この子が子供って事ですか?」 「そうそう」 嬉しそうに目を細めてガルーラの赤ちゃんを撫でた。 その触れ方が端から見ていてもすごく愛おしそうで、何故かドキリと心臓が跳ねる。 え、何で何で!? 混乱した結果、どうにかせねばという結論に辿り着いた。 「そ!そういえばもしレイジさんと夫婦ならシンジは義弟になっちゃうよねえ!」 「え、ああ、そうだね」 「何か姑の如く弄られそう!」 シンジ意地悪だから! そう叫んだけれど、ぶっちゃけあたしは何を言っているのか理解していなかった。 あわあわと目が回るような思いをしていた。 すると、手にふと温もりが伝わる。 え、と思考停止。 目をパチパチと瞬きさせて手を見た。 レイジさんの手が、あたしのそれに、重なってい、た。 ぼぼぼぼと顔に熱が集まる。 「ななな…!」 「ナマエちゃん、さ…」 「ははは、はい!?」 「オレの事、どう思ってる?」 どう…とは?、震える声を抑えて聞き返す。 あたしの目はレイジさんのそれに捕らえられた。 逸らせな、い…。 わかってるんだろ?そう目で言っている。 最早逃げ道は無い。 いや、最初からそんなものは無かった。 「シンジの話ばかり聞くの、結構辛いんだぞ?」 「オレは、ナマエちゃんが好きだから」 丁寧に分けられた二つの文はあたしの脳にしっかり届いた。 良い感じの距離をとって隣にいたレイジさんは、何時の間にかあたしに密着している。 膝の上にいたガルーラの赤ちゃんはいなくなっていた。 これも何時の間にか、だ。 「こ、答えますから、離れて、ください…」 「…しょうがないなあ」 弱々しい手でレイジさんを押すと、しぶしぶと離れてくれた。 それでも距離は近いのだけれど。 すうはあと深呼吸を繰り返して心臓を落ち着かせる。 「あたしは、好きとか、まだわかんない、ですけど、」 「うん」 「今は、何故か、れっ、レイジさんに、ドキドキして、ま、ぎゃあ!」 言い終わらない内にレイジさんに抱き締められてしまった。 折角落ち着かせた心臓が今まで以上に忙しなく動く。 あたしはぎゅうとエプロンを掴む。 耳元でうん、そっかあとどこか嬉しそうな彼の声が聞こえてぶるりと体を震わせた。 「それが、好きって事なんだよナマエちゃん」 やっと体が離されたと思えば、視界はレイジさんでいっぱいになった。 その距離、0センチ (ナマエちゃん大好き)(そう呟かれた言葉はあたしの唇に消えた) 090902 |