poke short | ナノ



 


要するにアレだ、うん。




「人肌が恋しい」


「…え?」




いやだからね、

もう一度繰り返そうと口を開く。

が、それは目の前の人物に遮られてしまった。

もがもが、手で覆われた口を動かす。




「あのさ、ナマエちゃん」


「ふあい?」


「それ、どういう意味で言ってる?」




どういう意味でって…、そりゃあ。




「あなたを誘ってるんです、ゲンさん」




手をどかし、ケロリと言うとゲンさんはピシリと固まる。

しかしそれも一瞬のことで、勢い良くあたしの両肩を掴んだ(ちょっと痛い)。

そしてどうしたんだ!?とそれはもう汗をダラダラ流して、あたしをガクガクと揺らし始める。


想像以上に激しい揺れで気持ち悪くなった。




「ゲンさ‥、ちょ、吐いちゃう吐いちゃう」


「あっ…、すまない‥‥。て、そうじゃなくて!」




目の前で混乱する彼は放っておいて、あたしは深呼吸をした。


ああ、気持ち悪かった。


口元を抑えてチラリ。

ゲンさんを見る。

未だに混乱状態だ。


あたしは近くにいたピカチュウを呼んで、膝上に乗せる。

撫で撫で。

毛並みの整った背中をゆっくり撫でてやると、気持ちよさそうな声を出して眠ってしまった。


そしてまたチラリ。

混乱状態から回復したゲンさんがいた。




「落ち着きました?」


「ああ…うん、取り乱してごめんね」


「いえいえ、貴重なものを見させていただきました」




ニヤリ、

思わずニヤケてしまったらしい。

ゲンさんが大きな溜め息をついた。

それにあたしはケラケラと笑う。


一通り笑い終わって、落ち着いた頃。

コホンと小さく咳払いをしてゲンさんを見た。




「で、」


「?」




誘いにはのってくれないんですか?

そう聞くと、彼は困った表情をして降参ポーズをとった。


座ったままのあたしに一歩、また一歩と近づく。

そして、




「今日はこれだけで許してくれるかい?」




触れるだけのキスをして、あたしの頭を撫でた。

しょーがないですねぇ、なんて答えながら目の前の唇に自分のそれを重ねた。




ただって欲しかっただけ
(ピカチュウがいるので見逃してあげます)(……)(ゲンさん?)((僕の方が無理そうだ‥))


090827






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