マサラタウンが、その名の由来通りに真っ白に染まった。 温暖化というのを染々と感じられた今、わたしは部屋で毛布にくるまっていた。 窓の外を見ると、白い雪がふわふわと風に揺られている。 それらが積もりに積もって、家の屋根や緑の大地を白で埋め尽くす。 滅多に使わない暖房も今日は大活躍である。 ふとイッシュ地方のセッカシティを思い出した…サトシはどこまで行ったのだろうか。 何か用があったのか、サトシが昨日帰ってきたらしい。 しかし夜遅くマサラに到着したらしくまだ会えていたいのだ。 今日会いに行くつもりだったのに、この雪ではその気も萎えてしまう。 うーうーと唸りながらわたしはベッドの中でゴロゴロとしていた。 「‥ぶはっ」 「……は?」 部屋のドア付近で噴き出す声が聞こえた、お母さんではないのは明らかだ。 わたしは体を起こしてその方向を見る、うわおと間抜けな声を出してしまった。 「サトシ、いつの間に?」 「ちょっと前かな、ナマエ面白すぎだぜ」 「…居たなら声かけてください」 「あはは!」 ああ、もう恥ずかしい。 赤いであろう顔を近くにあったクッションに埋めて隠す。 サトシはわたしの隣に腰を下ろす、ベットがギシッと軋んだ。 そろそろと少しだけ顔を上げて隣をチラリと盗み見る。 イッシュに旅立ってまだそんなに時間が経っていないと言うのに、彼はまたほんの少し大人びて見えた。 思っていたより長く見ていたせいかサトシと目が合ってしまった、慌てて目を反らすが遅かった。 再び小さく噴き出す声が聞こえたと思ったら、わたしの頭に手が回る。 そのまま勢い良くサトシの方に引き寄せられ、距離が縮む。 「久しぶりだな、元気だったか?」 「…うん、そっちこそ」 「オレは元気だぜ。もちろん、ピカチュウもな」 「そう、よかった。イッシュはどう?楽しい?」 「ああ、新しいことばっかりで楽しいぜ!次はナマエも一緒に行こうな」 「………うん」 その次と言うのはいつになるのだろうか、その疑問は口に出さず、ただ胸の中でぐるぐると見つからない答えを探すだけになってしまった。 ただ、久しぶりのサトシの体温は暖かくて、少し、涙が出てしまったのは……寂しいだけ…ではない。 しばらくサトシに寄り掛かったままで他愛の無い話をして、彼は帰って行った。 次会えるのは、いつだろうか。 次の日の朝、わたしはいつもより早く目を覚ます。 外は溶け掛かっている雪の間から土の色が見えた。 今日は暖かくなりそうだ、なんて考えていたら慌てた様子のお母さんが部屋に転がり込んできた。 「あんたまだそんな格好で何してるの!早く着替えなさい!」 「は?何言ってるの」 「まだ寝惚けてるの?今日はサトシくんとイッシュ地方に行くんでしょう!サトシくん、もう外で待ってるから早く用意しなさい!」 …………嘘だ。 「そんな話聞いて無いんだけど…!」 お母さんが出ていった部屋でわたしはバタバタと用意をする。 そして慌てて家の外に出ると、笑顔のサトシがおはよう、と言った。 「サトシ、一体どういうこと?」 「昨日言っただろ?“次はナマエも一緒に行こうな”って!」 春はすぐそこに 110214 (ひ、飛行機怖いんだけど…!)(大丈夫だって!)(ぎゃああああ) |