“厳しさ7割、優しさ5割、これが本当の愛情なのだと思う。星野仙一” 「…だって」 「……それが何だ」 低めの机を挟んで、向かいの二人掛けのソファーに座っているシンジが眉間に皺を寄せて答えた。 その様子をチラリと見てから、読んでいた本に目を落とす。 思わず頬が緩んでしまった。 「これってシンジのことだよねぇ」 「…は?」 「つまり何が言いたいのかというと、シンジは何だかんだ言ってあたしのこと愛してくれてるよねってこと!」 にこりと笑ってそう言うと、目の前の彼は頬を赤く染めて馬鹿言うなと毒を吐いた。 説得力ないよ、少年よ! 普段は自分だけじゃなくて誰に対しても厳しいシンジ。 でもあたしだけに見せる優しさとか… 「‥うん、やっぱ愛されてる」 「……勝手に言ってろ」 「え?愛してくれてないの?」 「な…っ!」 どうなのよ、と半ば責めるように問い掛ける。 視線を泳がせうんぬん呟くというシンジらしくない態度を見せた。 それに少しばかりの優越感を覚え、あたしは調子にのる。 本に栞を挟んで閉じてから、ソファーの空いているスペースに放り投げた。 立ち上がって、シンジの隣に座る。 縮まった距離にシンジがあたしとは逆方向にジリジリと移動した。 「何で逃げんの!」 「に、逃げてない!おまっ、近い!離れろ!」 「何でよ!付き合ってんだから近付いてもいいでしょ!?」 んなことよりもどうなのか早く答えろ! そう叫んで更に距離を縮める。 逃げられないように、シンジの手を掴んで。 それでも往生際が悪く、せめてもの抵抗と言わんばかりにそっぽ向いた。 そこまでされるとあたしも不安になるわけで。 握っていた手を引き、無理矢理こっちを向かせた。 「…あたしのこと愛してないの?」 知らず知らずの内に鼻声になってしまう。 鼻がつーんとしてきて、あたし泣くのかな?なんて他人事の様に考えた。 「あ!愛してるに決まってんだろう!愛していなかったらこんなに動揺するか!」 「え、」 「お前の笑顔を見ると嬉しくなる、泣いている顔を見ると俺が守らなければと思う!俺がこう思うのはお前だからで、愛してるからだ!だから離れろ!」 シンジは顔を真っ赤にして怒鳴るように言った。 その表情と言葉につられるように、あたしの顔も赤くなる。 こんなに感情を露わにするシンジは見たことがない。 ドクドクと心臓が激しく脈打つ。 それと比例するかの様に、シンジの手を掴んでいた自分のそれに力が入る。 「‥おいっ!」 「愛してるなら、何で離れなきゃいけないの」 「それ、は…」 「あたしはもっとシンジに近付きたい、傍にいたい」 シンジの目が見開かれて、あたしが映っているのが見えた。 細かい表情はわからないけど、なんとも情けない顔をしてる。 もっと見ようと無意識にシンジの目に近付く。 ということはシンジ自身にも近付くということで…、 不意に、もう知らないからな…っ!と小さい呟きが耳に届いた頃にはあたしたちの間に距離は無かった。 噛みつくようなキスを (俺はちゃんと言ったからな、離れろって)(お前の泣き顔は反則なんだよ) 090830 まさかの無変換orz |