虫の声が秋を知らせる、秋は好きだけど嫌い。 サトシが帰ってきてまたすぐに旅立ってしまうから、わたしの何メートル先も歩いて行ってしまうから。 「…あのさ、料理、ありがとな」 「え、」 「ママと一緒に作ってくれてたんだってな、何で言わなかったんだよ」 「わ、わざわざ言うことじゃ無いかなって思って」 「言わなきゃ駄目だろ、…言ってくれたらちゃんと味わって食べてたのに」 「ご、ごめん‥」 そこで沈黙。 気まずい空気が流れて、何か言おうと口を開けても声が出ない。 そういえばピカチュウがいない、家に残ったのだろうか。 少し的外れな事が頭を過ぎった時、掴まれていた腕は解放され今度は手が塞がれた‥というか繋がれた。 幼い頃はよくしていた行為は歳を重ねるごとに恥ずかしくなり、異性とそうすることは滅法無くなった。 だから免疫が無い訳で。 「ちょちょちょ、サトシ!」 「なんだよ?」 「てっ、手!」 「繋いじゃいけなかったか?」 「そ、んなこと‥ない、けど……恥ずかしい」 「‥じゃあ、恥ずかしいついでに」 「ん、」 何、恥ずかしいついでにって意味わかんないとかぎゃあとか口に出したいことは沢山あった、うん。 けれどそれは叶わなく次はわたしの口を塞がれた、というか、キス、接吻、ちゅー。 つまりは恋人同士のみができる行為をしている、のだ、あれ? 「‥キスする時は目、閉じろよ」 「え、え?ええ?」 「…なあ、俺また旅に出るんだ」 「あ‥、うん、そうだよね…」 「そこでさ、あの、今度はナマエについて来て欲しいんだ」 「…は?」 「オレ、シンオウリーグで初めてベスト4までいったんだ」 「知ってる、おめでとう」 「ありがとう、それでさ、自惚れてるだけかもしんないけど、オレ、ナマエを護れる位には強くなったと思う」 「…‥うん、」 「大好きなナマエをマサラに置いて旅するとさ、心配なんだよ」 「‥んん?」 「なあナマエ、好きだ。オレと一緒に旅をしてくれないか?できれば、ずっと」 これは、何だろう、自惚れていいのかな、告白、いやプロポーズと受けとっていいのかな。 どっちにしろ、わたしの答えは決まっているのだけれど。 …はい、喜んで (その言葉と同時に出たのは涙か、笑顔か)(両方) 100905 ベストウィッシュ続役おめでとうっ! |