緑豊かな村。 さんさんと降り注ぐ日差し。 キラキラと光る川。 ドボーン! ……サトシやヒカリ、そしてポケモン達がはしゃいでいる音、声。 「あ゙づい゙…」 唸るあたしの声。 パラソルの下で体育座りをして恨めしそうにサトシ達を見た。 「ナマエは入らないのか?」 「…うん」 「何でだ?」 「………」 水着になって川に入る気満々のタケシが心配そうにあたしを見る。 だらだらと流れる汗をタオルで拭って、へらりと笑う。 「水着姿なんて見せらんないもん」 「は?」 「スタイルよくないし、」 あたしだって仮にもオンナノコだ。 好きな人に自分のスタイルの悪さなんて見せらんない! サトシと一緒にはしゃぐヒカリがとてつもなく羨ましい。 隣でタケシがうーんと唸る。 俺は普通だと思うけどな?、その言葉に少し救われた気がした。 「サトシは気にしないと思うぞ?」 「サトシは気にしなくてもあたしが気にするのー」 「せっかく水着に着替えたのにサトシに見せなくていいのか?」 水着一生懸命選んだろ? そう続けるタケシ。 一応着替えたんだけど、自信が無くて上にパーカーを着ている。 ご丁寧にチャックまで閉めて。 確かに水着は一生懸命選んだ。 見てほしいって気持ちは勿論ある、けど自分に自信がない。 矛盾してるのはわかる。 これが(多分)オトメゴコロなのだからしょうがない。 そんな複雑な心を読み取ったのかタケシは苦笑を一つ浮かべて、気が向いたら入ってこいと一言置いてサトシ達のもとへと行ってしまった。 「…いいなあ」 膝裏に通した腕に力が入る。 段々情け無くなってきて、膝に顔を埋めた。 サトシィー…、 心の中で愛しい彼の名前を呼ぶ。 「ナマエ?」 「!?」 頭上から聞き覚えのある声が聞こえて顔を上げる。 その瞬間、ポタポタと顔に水滴が落ちた。 冷たっ! 驚いて目をギュッと瞑った。 俯いて腕で顔を拭う。 「なっ、何!?」 「ああ、ごめん!」 再び顔を上げると水浸しのサトシがいた。 近くのタオルを取ってごしごしと髪の毛や体を拭いている。 思わず吹き出してしまった。 「む、何だよ」 「あはは、なんでも無い!」 「まあ、いいけどさ!ナマエも一緒に入ろうぜ!」 しゃがんであたしと目線の高さを合わせる。 太陽みたいに眩しい笑顔を向けてあたしを見た。 入りたいのは山々なんだけどね…、 あたしはいいや、そう返事を返すと、サトシが拗ねたような顔になった。 「あたしはいいから、サトシ入っておいでよ」 「えー!俺はナマエと遊びたいんだ!」 そんなこと言われてもなあ…、 水着姿を見せる勇気はない。 パーカーをぎゅっと握って苦笑いを浮かべた。 それを見たサトシは眉を潜めて、パーカーを掴んだあたしの腕を掴む。 「さっ、サトシ?」 「ほら、ナマエも暑いんだろ?入ろうぜ!」 「ちょ、サトシ!ぎゃあっ!」 問答無用、とでも言うようにあたしのパーカーのチャックに手をかけた。 抵抗しようとサトシの肩を押すも、水に濡れたそれはスルッと滑ってしまう。 その隙をついてチャックに手をかけるサトシ。 ちょっと待って!そういう前にチャックはジーっと音を立てて降りてしまった。 「あっ…」 「これでナマエも…、あ‥!」 かあああ、顔に熱が集まる。 見られた、見られてしまった。 サトシはどう思ってるんだろう‥? 反応が怖くて目を瞑った。 ジー‥、チャックを閉める音が聞こえる。 え? 恐る恐る目を開けると、真っ赤な顔でそっぽ向いているサトシがいた。 「や、やっぱり、いい」 「へ、変なものをお見せしました‥」 内心涙目でサトシに謝る。 ああ、隠したいほど醜かったのか。 「いや、そうじゃなくて‥、寧ろ美味しかったというか…じゃなくて!」 「へ?」 「絶対これ脱いじゃ駄目だからな!」 「う、うん」 「…でも、似合って、る」 「えっ!?」 「でも!」 見て良いのは俺だけだ! (タケシに見せたのか!?)(み、見せてない見せてない!) 090813 |